農業――小規模農家 vs 大規模地主

世界の農業と聞くと、地平線まで続くような広大な畑や巨大な機械、大規模な工業的農場を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、世界の食料事情の実態は、それよりずっと意外です。世界の農場の多くはとても小さく、それらが合わさって、人々が食べている食料のかなり大きな部分を生産しているのです。

小規模農家は、農地全体の面積では控えめな割合しか占めていませんが、それでもなお食料生産や農村の暮らし、そして農業を取り巻く経済において中心的な存在であり続けています。一方で、世界で最大規模の農場は土地所有をほぼ独占し、農業景観のあり方を左右しています。この対比が、ひとつの重要な問いを浮かび上がらせます。多くの人々の食を支えているのが小規模農家だとしたら、なぜこれほど多くの農地がごく少数の手に集中しているのでしょうか。

2021年時点で、小規模農家は世界の食料のおよそ3分の1を生産していました。彼らが実際に使っている土地の小ささを考えると、これは驚くべき数字です。

小規模農家の大部分は、耕作面積が1ヘクタール以下です。1ヘクタールは1万平方メートルで、よくサッカー場1面ほどの広さと説明されます。つまり、世界の食を支えている多くの農場は、私たちのイメージする巨大な農場と比べると「小さすぎる」と感じるような面積で営まれているのです。

この事実は、「地球の食を支えられるのは巨大な農場だけだ」という思い込みに疑問を投げかけます。現実には、食料生産は何百万という小規模農家に分散しており、それぞれが比較的小さな区画を耕しています。

一般に「小規模農家(スモールホルダー)」とは、小さな土地を管理し、多くの場合は家族労働に大きく依存している農家を指します。こうした農家は、地元コミュニティや農村経済と密接に結びついています。面積が大きくなくても、食料供給という点では非常に重要な存在になり得ます。

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ほとんどの農場は小さい

世界全体で見ると、6戸の農家のうち5戸は、耕作面積が2ヘクタール未満です。1ヘクタールは約2.5エーカーなので、2ヘクタールは約4.9エーカーということになります。言い換えれば、世界の農場の圧倒的多数は、規模としては「ささやか」と言える大きさなのです。

それにもかかわらず、こうした農場が占めている耕地は、全農地のわずか約12%にすぎません。このギャップこそが、「小規模農家 vs 巨大地主」という物語の核心です。ほとんどの農家はごくわずかな土地しか持たず、ごく少数の農場が大半の土地を支配しています。

これは、農業において「農家の数」と「土地の分配」がまったく別物であることを示す、きわめて分かりやすい例です。農場の“戸数”で数えれば小規模農家が圧倒多数ですが、“土地の面積”で見れば大規模農場が圧倒的なのです。

巨大地主の存在

世界の農場のうち、50ヘクタール(約120エーカー)を超えるものは、全体のわずか1%しかありません。ところが、このごく少数の農場が、世界の農地面積の70%以上を抱え込んでいます。

つまり、世界の農業地図は、巨大な土地所有者によって大きく形作られているのです。数としては少ないものの、彼らは農地の大部分を支配しています。

さらに規模が大きくなると、その集中ぶりは一段と際立ちます。世界の全農地のおよそ40%は、1,000ヘクタール(約2,500エーカー)を超える農場に存在しています。これらは文字どおり巨大な事業体であり、農業生産システムや土地利用、農村景観に対して、極めて大きな影響力を持っています。

こうして眺めると、世界全体の姿は次のようになります。無数の小さな農場が、比較的少ない土地を耕している一方で、ごくわずかな巨大農場が、膨大な土地を支配しているのです。

なぜ土地の集中が問題なのか

土地は単なる「場所」ではありません。農業において、土地は「力」そのものです。

誰が農地を支配しているかによって、何が作られるのか、どのように作られるのか、そして農業システムが環境や農村社会にどのような影響を与えるのかが左右されます。農場と農業は、農村の経済を大きく左右し、農業に直接関わる人々だけでなく、それを支える周辺産業にも影響を及ぼします。

つまり、土地所有の構造は、農場の敷地境界をはるかに超えた帰結をもたらします。大規模農場は、扱う土地の規模があまりに大きいため、それだけで地域市場や景観を左右することができます。一方、小規模農家は、所有する土地は少なくても、食料生産において大きな役割を担っています。

こうした緊張関係から、農場規模の問題が単なる技術的な話にとどまらない理由が見えてきます。これは社会的・経済的な問題でもあるのです。

「人を養うこと」と「土地を支配すること」のズレ

食料生産量と土地支配のギャップこそが、このテーマをとりわけ興味深いものにしています。

小規模農家は、2ヘクタール未満の農地しか持たないにもかかわらず、世界の食料のおよそ3分の1を生産しています。これは、食料生産が単に土地面積の多寡だけで決まるわけではないことを示しています。

一方で、大規模農場は依然として総農地の大半を占めています。50ヘクタール超の農場が、世界の農地の70%以上を抱えており、その中でも最大級の農場がとりわけ大きな比重を占めています。つまり、数の上では小規模農家がほとんどであるにもかかわらず、農地という資源そのものは、ごく一部の大規模農場に高度に集中しているのです。

ごく単純に言えば、「食料を作っている人々」と「土地を支配している人々」は、必ずしも同じ規模の集団ではない、ということです。

農業は「食べ物」だけではない

小規模農家と大規模農場の重要性を理解するには、農業を「作物栽培」に限定せず、より広く捉える必要があります。農業には、土を耕し、作物を植え、食料用・非食料用の作物を育てて収穫すること、そして家畜の生産が含まれます。より広義には、林業や水産養殖を含めることもあります。

農産物には、食料のほか、繊維、燃料、原材料などがあります。食料には、穀物・シリアル、野菜、果物、食用油、肉、牛乳、卵、キノコ類などが含まれます。繊維には、綿花や羊毛などがあります。原材料には、ゴムや木材などが含まれます。

世界全体では、農業は年間約110億トンの食料、3,200万トンの天然繊維、40億立方メートルの木材を生産しています。したがって、農地が一部に集中すると、その影響は食卓だけにとどまりません。さまざまな素材の供給や農村の雇用、農業関連産業全体にも波及します。

深い歴史を持つシステム

農業は、人類が定住生活を営む文明を築くうえでの重要な要因でした。作物や家畜の栽培・飼育によって余剰の食料が生まれ、人々は都市に住むことができるようになりました。人類は少なくとも10万5,000年前には穀物を採集しており、およそ1万1,500年前には、それらを自ら植え始めていたとされています。

やがて農業は、世界各地の少なくとも11の地域で、それぞれ独立して誕生しました。羊、ヤギ、豚、牛などの家畜は、約1万年前に家畜化されました。この長い歴史が示しているのは、農業がかつてから一枚岩の仕組みではなかったということです。常に多様な作物や家畜、多様な地域と規模が入り混じって存在してきました。

20世紀に入り、大規模な単一栽培を基盤とする工業的農業が生産量の面で主流となった今でも、その多様性は依然として残っています。

モノカルチャー(単一栽培)とは、1種類の品種や作物を広い面積にわたって植えるシステムです。生産管理が単純化しやすい一方で、生物多様性が低くなるため、農薬や肥料への依存度が高まりがちです。これが、現代農業が収量を大きく伸ばす一方で、生態系や環境への負荷を高めてきた一因とされています。

あらゆる規模の農場にかかる現代のプレッシャー

現代の農業は、かつてないほど大きな圧力のもとに置かれています。食料を生産し、人々の暮らしを支えながら、同時に環境ストレスにも対応しなければならないからです。

農業は、環境悪化の一因であると同時に、その影響を強く受ける分野でもあります。農業に関連する問題としては、生物多様性の損失、砂漠化、土壌の劣化、帯水層の枯渇、森林破壊、農業起源の汚染、気候変動への寄与などが挙げられます。これらの問題は、作物の収量低下を招くこともあります。

農業は、世界の淡水利用の約70%を占めています。需要の増加や一部の帯水層の枯渇により、水不足はますます深刻な課題となりつつあります。気候変動もまた、気温や降水パターンの変化、異常気象の増加、害虫や病気の拡大などを通じて、農業に影響を及ぼしています。

こうしたプレッシャーは、農場の規模や資源、立地によって受け方が異なります。しかし、小規模農家にとっても巨大地主にとっても無関係ではありません。両者とも、同じ世界的な食料システムの一部だからです。

小さな農場と大きな労働力

2021年には、世界で8億7,300万人が農業に従事しており、これは世界の労働力の27%に相当します。農業は、特に低所得国やサハラ以南アフリカにおいて、今なお重要な雇用の柱です。

これもまた、小規模農家の物語が重要である理由のひとつです。農業は土地や生産量の話だけではありません。そこで働く人々、家族、暮らしの問題でもあります。世界中で、女性は農業労働力の大きな割合を占めており、サハラ以南アフリカではその比率は47%に達します。小規模農業と家族労働は、多くの農村地域の社会構造の中に深く織り込まれているのです。

したがって、「国を養っているのは誰か」と問うとき、答えは単なる耕地面積の問題ではありません。そこには、労働力や地域に根ざした知識、そして面積としては小さいかもしれないけれど、重要性としてはきわめて大きい畑を耕す何百万人もの人々の存在が含まれています。

数字の裏にある問い

世界の農場地図には、印象的なパラドックスがあります。ほとんどの農場は小さい。しかし、ほとんどの土地はそうではないのです。

多くは1ヘクタールにも満たない小規模農場が、世界の食料の約3分の1を生産しています。一方で、全農場のわずか1%にすぎない50ヘクタール超の農場が、世界の農地の70%以上を支配しています。

だからこそ、農業をめぐる議論は単に「どれだけ生産するか」だけでは終わりません。それは、土地の分配や農村での力関係、そして未来の食料システムのあり方をめぐる議論でもあります。小規模農家は世界の食を支え、巨大地主はその食料システムが成立する「舞台」を形作っているのです。

そして、このことがひとつの論点をはっきりと浮かび上がらせます。農業において、規模は単なる「大きさ」の問題では決してない、ということです。

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