人間居住地のマッピング

人間居住地マッピングとは、世界中に広がる人々・建物・インフラの分布を「見える・測れる・比較できる」形にする取り組みです。空間モデリングにおいて、居住地とは都市、町、村、その他の人々が暮らし働く建物群を指します。もっと平たくいえば、「人の存在が景観の上に残した目に見える足跡」です。

一見シンプルなようですが、地球規模で居住地をマッピングするのは非常に難しい作業です。人間のコミュニティは、ごく小さな家の集まりから、巨大な都市とその周囲に広がる広大な市街地まで、実にさまざまです。居住地には、農場や小集落、村、町、都市が含まれます。さらにしばしば、道路、囲い地、耕地システム、土塁や堀、池、公園、森林、風車、水車、荘園邸宅、堀、教会などの人工構造物も含まれます。

したがって、居住地の地図は単なる「家の地図」ではありません。人間が土地をどのように組織してきたかを示す地図でもあるのです。

地理空間予測モデリングは、地図をベースにしたコンピュータ解析で実在の場所を研究する手法です。この文脈での居住地とは、人が暮らし働く建物群としての都市、町、村、その他の集積地を指します。重要なのは、焦点が「空間」にあることです。建物がどこにあるのか、人がどこにいるのか、そのパターンが時間とともにどう変化するのかを扱います。

こうしたマッピングが重要なのは、現代の居住パターンが絶えず変化しているからです。世界的な都市化は近年、急速に加速しています。国連の「World Urbanization Prospects 2025」によると、世界人口82億人のうち45%が都市、36%が町や準都市地域、19%が農村地域に住んでいます。同報告書はまた、2025年までの世界人口増加の約3分の2が都市部で起こると予測しています。さらに、人口1,000万人を超えるメガシティの数は、2025年には33に達するとしています。

1975年以降、人口増加のほぼ2倍のペースで市街地が拡大していると報告されていることからも、自動化された居住地マッピングがなぜ重要になっているかが分かります。従来型のローカルな調査だけでは、人の分布を把握するのが難しくなっているのです。大規模で定期的に更新される空間データが不可欠になっています。

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グローバル・ヒューマン・セトルメント・レイヤー(GHSL)

この分野で最も重要なシステムのひとつが、Global Human Settlement Layer、略してGHSLです。このフレームワークは、地球上の人間の存在について、時間軸も含めたグローバルな空間情報を生成します。その成果は主に次の形で提供されます。

  • 市街地(建造物)マップ
  • 人口密度マップ
  • 居住地マップ

それぞれが居住地の異なる側面を明らかにします。

市街地マップは、建造物の物理的なフットプリントに焦点を当てます。どこに建物やインフラが存在するかを示すのに役立ちます。

人口密度マップは、ある範囲にどれだけの人が住んでいるかに着目します。見た目の市街地の広さが似ていても、居住人口は大きく異なりうるため、密度は重要な指標です。

居住地マップは、こうした視点を統合し、人々がどこで暮らし働いているかという広いパターンを示します。

これらのレイヤーを組み合わせることで、「居住地」を単なるラベルとしてではなく、建造物・人口・土地利用が組み合わさった動的な現象として分析できるようになります。

居住地マップはどのように作られるか

GHSLフレームワークは「異種データ」を利用します。つまり、ひとつの情報源に頼るのではなく、複数の種類のデータを組み合わせているということです。主なデータ源は次のとおりです。

  • 高解像度の衛星画像のグローバルアーカイブ
  • 国勢調査データ
  • ボランティアによる地理情報

衛星画像は、地球表面を広域かつ繰り返し観測できるのが強みで、非常に広い地域での市街地の把握に特に有効です。

国勢調査データは、人口構成という側面を補います。画像からは「どこに建造物があるか」は分かりますが、国勢調査情報を重ねることで、それが実際にどの程度の人口と結びついているかを理解できます。

ボランティアによる地理情報は、人々が自発的に提供する地理データで、地上に何が存在するかの理解を一層豊かにしてくれます。

これらの入力データは、その後すべて自動処理されます。これはGHSLの大きな特徴のひとつです。場所ごとに人手で解釈するのではなく、新しい空間データマイニング技術を用いて、エビデンスに基づく分析と知見を生成します。空間データマイニングとは、位置情報を含むデータから意味のあるパターンを見つけ出すプロセスのことです。居住地マッピングでは、膨大なデータセットの中から人口やインフラの存在を示す兆候を自動的に抽出することを意味します。

処理が自動化されているため、報告は客観的かつ体系的になります。この一貫性は、国や時期が異なる場所同士を比較する際に欠かせません。

居住地を定義することがなぜ難しいのか

地上で見れば居住地は分かりやすいように思えますが、その定義は国によってさまざまです。ある国で「タウン」と呼ばれる場所は、別の国では「村」に分類されるかもしれません。ある国の大きな町が、別の国では都市と見なされることもあります。政府機関や統計機関ごとに用語も異なります。

例えばオーストラリアでは、人口200人以上が住む名前の付いた居住地を「集住地(populated place)」と定義しています。スウェーデンでは、人口が密集した場所を示す「ローカリティ(localities)」という用語が使われ、英語では一般に「都市地域(urban areas)」と訳されます。イギリスでは、いくつかの国勢調査分析において「アーバン・セトルメント(urban settlement)」という用語が使われています。アメリカ合衆国地質調査所(USGS)は、「populated places(居住地)」「census areas(国勢調査区)」「civil divisions(行政区画)」などを区別しています。

このような違いから、世界規模でマッピングを行う際の基本的な問題が生じます。つまり、「居住地」を表す共通の語彙が世界にひとつだけ存在するわけではないのです。だからこそ、GHSLのようなシステムが重要になります。ローカルな行政区分が異なっていても、標準化された手法でグローバルな空間情報を提供しようとしているからです。

居住地は地図上の点以上の存在

居住地マッピングは、現在の都市だけを扱うものではありません。より広い概念としての居住地には、わずかな住居の集まりから、最大の都市とその周辺に広がる市街地まで、すべてが含まれます。また、居住のプロセス自体が、人々が移動し、特定の場所にコミュニティを築くことと不可分であるため、移住とも深く結びついています。

歴史的に見ても、居住地は時間とともに劇的に変化してきました。人間の居住地に関する最古の地理的証拠は、ジェベル・イルフード(Jebel Irhoud)に見られます。そこでは、中期旧石器時代、約30万年前の現生人類8人分の遺骸が発見されています。建造された住居の最古の遺構は、ガリラヤ湖近くのオハロ(Ohalo)遺跡で見つかった、紀元前1万7000年頃の泥と枝で作られた小屋です。その後、ナトゥーフ文化の人々が、紀元前1万年頃にレバント地方で家屋を建てました。農耕の発明以降、村といった居住地の遺構ははるかに一般的になり、イラクのジャルモ(Jarmo)は現時点で最古の村落遺跡として知られています。

このような長い歴史は、マッピングにとっても重要です。居住地は地球表面に一時的に現れた「例外的な跡」ではなく、人間が景観を形作る中心的なあり方のひとつだからです。

居住地地理学から都市成長の分析へ

居住パターンは、その形態、つまり形(モルフォロジー)からも研究できます。景観史の分野では、居住地は分散型か集村型かといった形で説明されることがあります。分散型のパターンでは住居が広い範囲に散らばり、集村型では住居がより密集して配置されます。都市形態論(アーバン・モルフォロジー)は、文化的・歴史的背景をもつ景観の一部として、都市居住地がどのような形をとるかを専門的に研究する分野です。

居住地階層(セトルメント・ヒエラルキー)は、規模や中心性などの要因から場所を分類する考え方です。中心性とは、ある場所が周辺地域にとってどれだけ重要な拠点かを示す指標です。これにより、居住地マップが単なる「人のいる土地の記録」ではないことが分かります。コミュニティ同士がどのような関係性で組織されているかも読み解けるのです。

これらの概念は、都市成長が加速するなかで特に重要性を増しています。人間の居住による市街地のフットプリントは急速に拡大しており、そのペースは必ずしも人口増加と比例していません。1975年以降、1人当たりの都市土地利用は44平方メートルから63平方メートルへと拡大しており、経済活動やインフラ需要の高まりを反映しています。言い換えれば、現代の居住地マッピングは単に「人を数える」だけではなく、人間の活動がどれだけの土地を占有しているかを追跡することでもあるのです。

取り残された場所をマッピングする

居住地マッピングには、「放棄された場所」も含まれます。ある居住地は、支えていた経済活動を失うことで衰退します。また、ダム建設による水没など、政府の施策によって放棄されることもあります。洪水、治安の崩壊、戦争なども放棄の要因になりえます。

こうした放棄された居住地には、ゴーストタウンのように、いまでも立ち入れる建物が残っている場合があり、観光地になることもあります。興味深いのは、見た目がゴーストタウンのような場所であっても、政府の分類上は依然として「居住地」と定義されている場合があるという点です。これは、居住地が物理的な概念であると同時に、行政的な概念でもあることを示しています。現地を訪れればほぼ無人に見える場所でも、公的な記録の中ではなお存在し得るのです。

地理空間システムにとって、これはもうひとつの課題を生みます。目に見える建造物の有無が、必ずしも現在の人口状況と一致しないのです。だからこそ、市街地マップと人口密度マップを組み合わせることが大きな意味を持ちます。

オープンデータとその重要性

GHSLフレームワークの顕著な特徴のひとつが、データと手法を無償かつオープンに公開している点です。そのアプローチは「オープン入力・オープン手法・オープン出力」と表現されます。つまり、データ、処理プロセス、結果のすべてを開かれた形で提供しようとしているのです。

このオープン性が重要なのは、人間の居住というテーマが本質的にグローバルな問題だからです。研究者やプランナー、一般市民にとっても、居住地情報を検証・再利用できることには大きな価値があります。手法を公開することで、結果がどのように導かれたかを理解しやすくなるという利点もあります。

居住地マップが照らし出す、ますます「見える」地球

人間居住地マッピングは、日々の暮らしの痕跡を、読み解くことのできる地球規模の図として表現する試みです。衛星画像、国勢調査データ、ボランティアによる地理情報を組み合わせることで、自動化されたシステムは、人がどこに住み、インフラがどこまで広がり、そのパターンが時間とともにどう変化しているかを可視化できます。

都市化が進み、市街地が拡大していくなかで、こうしたマップは単なる技術的成果物以上の意味を持つようになります。孤立した小さな建物群から、広大に広がるメガシティに至るまで、人類がどのように地球を占有しているのかを示すツールとなるからです。そうした意味で、居住地マッピングは地理の問題にとどまりません。人間の存在そのものを測る手段でもあるのです。

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