幼児の発達と知能:早いことは何を意味する?

保護者は、幼児期の発達の節目をつい細かく見守りがちです。初めてのあんよ、初めてのことば、初めての二語文…。こうしたことが早くできると、「将来なにか大きな意味があるのでは?」と考えたくなるかもしれません。研究からは、発達の節目を早く達成することと、その後の知能とのあいだに関連がある可能性が示されています。ただし重要なのはバランスです。平均的には、発達がやや早い子は後の知能テストでわずかに有利な傾向がありますが、それでその子の運命が決まるわけではありません。

一般に「幼児」とは、およそ1〜3歳ごろの子どもを指します。この時期には、認知面・感情面・社会性などが一気に発達します。「幼児」を意味する英語「toddler」は、「よちよち歩き」を表す “toddle” から来ており、この年齢の特徴をよく表しています。

幼児の発達には、歩く・話すだけでなく、いくつもの領域が関わっています。

身体発育は、身長や体重などの大きさの変化を指します。粗大運動の発達は、歩く・走る・跳ぶ・よじ登るといった大きな筋肉の動きをどれだけコントロールできるかに関係します。微細運動の発達は、自分で食べる、絵を描く、物を扱うなど細かい動きのコントロールに関わります。そのほかにも、視力・聴力・発語、友だちと遊ぶ・順番を待つ・ごっこ遊びをするなどの社会性にも、それぞれ発達の節目があります。

大事なのは、「発達の節目」はひとつの指標だけではないという点です。ある子は運動面はぐんぐん進む一方で、ことばはゆっくりということもあります。発達は連続した流れの中で起こるもので、「正常」と考えられる範囲にはかなり幅があります。

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早い発達の節目と知能の関係に関する研究

これまで、発達の節目が極端に遅れている場合、知的障害や身体障害と関連している可能性があることは知られていました。しかし、一般的な発達をしている子どものあいだでは、「節目をいつ達成したか」と「その後の知能」のあいだに意味のある関係はないと、多くの人が考えていました。

近年の研究は、その考えに疑問を投げかけています。

イギリスで1946年に生まれた子ども5,000人以上を対象にした2007年の研究では、子どもが1か月早く「つかまり立ち」をできるようになるごとに、8歳時点のIQ(知能指数)が平均0.5ポイント高いという結果が示されました。IQ(知能指数)は、一定の思考力や問題解決能力を推定するための指標です。

一見すると印象的な結果ですが、注意深く読む必要があります。これは多くの子どもたちをまとめて見たときの「平均的な傾向」にすぎません。個々の子どもについて、「早く立てたから必ずIQが高くなる」「正常範囲内でも立つのが遅ければ問題がある」といったことを意味するわけではありません。

ことばの発達も関係している可能性

言語の節目は、とくに保護者が気づきやすいものです。幼児の「初めてのことば」は平均すると生後12か月ごろに出ることが多いですが、あくまで目安です。その後、語彙は少しずつ増えていき、18か月ごろから一気に増えることがよくあります。なかには、1日に7〜9語も新しいことばを覚える幼児もいます。21か月ごろには、「いく」「ママ ちょうだい」のような二語文を話し始める子も多くなります。

研究では、こうした初期の言語の節目と、その後の知能のあいだにも関連があることが報告されています。2018年のある研究では、絵に描かれた物や動物の名前を、18か月前に言えるようになったか、18〜24か月のあいだか、24か月以降かといった言語の指標をもとに、成人後の知能との関係が検討されました。

さらに、24か月前に文を作れるようになった子どもは、若年成人期(ここでは20〜34歳)に平均IQ107だったのに対し、24か月を過ぎてから文を作るようになった人の平均IQは101だったという報告もあります。

ここでも、これは集団として見た平均値であって、個々の子どもに当てはまる「決まり」ではありません。平均で6ポイントの差と聞くと大きく感じるかもしれませんが、それだけでその人の能力、環境、将来の結果のすべてを説明できるわけではありません。

相関関係は「運命」ではない

このテーマで最も重要なのは、「相関」の捉え方です。相関とは、2つの事柄が一緒に変動する関係を指しますが、それだけで一方が他方の「原因」だと証明することはできません。

もし「早く立てる」「早く文を話せる」といったことが、その後のIQのわずかな高さと結びついていたとしても、それは「親が子どもを無理に早く立たせたり、話させたりするべき」という意味にはなりません。専門家は、正常な範囲で発達しているかぎり、節目を急がせないよう、むしろ注意を促しています。

その背景には、発達のタイミングは、大きな全体像のごく一部にすぎないという現実があります。

早期の節目は、成人後のIQをどの程度説明できるのか

この分野で興味深いのは、こうした初期の指標が、成人後のIQの違いのどれくらいを説明できるのかという点です。

発達の節目を早く通過していたことと、3歳までの頭囲の大きさを合わせて考えた場合、それらが説明できた成人後のIQのばらつきは、約6%でした。ここでいう「ばらつき(分散)」とは、ある集団の中で見られる人ごとの違いのことです。つまり、幼児期の発達要因だけでは、成人になったときのIQの違いのごく一部しか説明できないということです。

一方で、親の社会経済的地位と子どもの性別は、IQの分散の約23%を説明していました。社会経済的地位とは、家族の収入、学歴、職業などの要素を含む概念です。

この比較は、現実をとらえるうえで役に立ちます。初期の発達の節目が、ある程度の情報を与えてくれるのは事実ですが、それだけで全体像が見えるわけではない、ということです。

親がタイミングを気にしすぎる必要がない理由

医療の専門家は、子どもはそれぞれのペースで成長すると強調しています。すべての節目を「きっちり予定どおり」に迎えなくても、過度に心配しないよう勧められています。早産で生まれた子どもや、乳児期に病気があった子どもでは、発達のペースがゆっくりになることもあります。

競争のように子育てが語られがちな今の社会では、この視点がとても大切です。歩き出す、話し出す、よじ登るタイミングが他の子より遅くても、まったく正常な発達の範囲内ということはよくあります。幼児期にはもともと大きな個人差があるのです。

2歳ごろになると、多くの幼児は歩く・走る・よじ登ることができ、短いフレーズで話すようになります。語彙は急速に増え、自分の好みを示したり、周囲を探索したりして、次第に自立心も育っていきます。しかし、その節目に至るまでの道筋は、子どもによってさまざまです。

発達の節目は、IQだけの話ではない

幼児の発達は、知能検査のスコアだけで語れるものではないことも忘れてはいけません。

この時期の子どもは、自分への気づき、感情表現、対人関係など、さまざまな面で成長します。18か月ごろになると、「自分は自分」という感覚がはっきりし、自分自身の考えや行動を持った存在として周りと関わり始めます。また、1歳の誕生日を迎える前後には、「あれ見て」と指さしで他者に物事を示す行動が見られるようになり、これは心理的に重要なステップとされています。

感情面では、いわゆる「イヤイヤ期」と呼ばれる2歳前後のかんしゃくが有名です。これらは単なる「わがまま」や「悪い行動」ではありません。幼児は強い感情を経験しますが、まだ言葉や自己抑制が十分ではないため、大人のようには表現できません。空腹、不快感、疲れ、自立したい気持ちなど、さまざまな要因がこうした爆発を引き起こします。

つまり、よく育っている幼児とは、「早く立てる」「早く二語文を話す」子どもだけを指すのではありません。身体・感情・社会性・認知が、同時にバランスよく育っている子どもを指すのです。

親や養育者への、より現実的なメッセージ

もっとも妥当な受け止め方は、「早さそのもの」を追い求めないことです。研究は、発達の節目が早いほど平均的にはわずかに知能が高い傾向があると示していますが、その影響は小さく、すべてを決めるものではありません。

ある大規模研究では、「1か月早く立てるようになること」と「8歳時のIQ0.5ポイントの差」が関連しているにすぎませんでした。早く文を話し始めることも、その後の平均IQの高さと関連していましたが、発達の節目と頭囲を合わせても、成人後のIQの違いのうち約6%しか説明できませんでした。興味深い事実ではありますが、「運命」を決めるほどの要因ではありません。

むしろ、大きなメッセージは安心材料です。子どもの発達を支え、日々の変化を見守り、「正常範囲はあくまで正常」と受け止めること。幼児期は大きな変化の連続であり、子どもによって辿る道筋に十分な幅があるのが自然なのです。

子育てをする親や養育者、そして発達に関心のある人にとって、みるべき本当の不思議は、「1〜2か月早いかどうか」ではありません。ぐらぐらした初めてのつかまり立ちから、ことば、文、自立心、そして世界への理解が一気に広がっていく――その短い時間に起こる、途方もなく大きな成長こそが、幼児期の本当の魅力なのです。

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