幼児のトイレトレーニング:まずは「準備OK」から

トイレトレーニングは、幼児期のなかでも大きな転機のひとつに感じられることがあります。いつ始めるのがよいのか、どれくらいのペースで進むものなのか、なかなか進まないときはどうしたらよいのか——こうした疑問を持つ保護者やケアする人は多いでしょう。そんなときに役立つ考え方は、とてもシンプルです。「急ぐ前に、まず“準備ができていること”を大切にする」ほうが、トイレトレーニングはうまくいきやすいということです。

1〜3歳ごろの幼児期は、認知面・感情面・社会性など、さまざまな発達が一気に進む時期です。この時期の子どもたちは、歩く・走る・よじ登るといった動きや、短い言葉で話すことを覚え、自分の世界をどんどん広げていきます。これだけ多くの発達が同時に進んでいるため、「トイレトレーニングは年齢だけでは決まらない」というのも当然のことだと言えます。

トイレトレーニングの準備には、大きく分けて「生理的な準備」と「心理的な準備」の2つがあります。

生理的な準備とは、子どもの身体がトイレトレーニングに必要な機能を果たせる状態になっているかどうかを指します。具体的には、肛門括約筋と尿道括約筋をコントロールできることです。これらは排便と排尿をコントロールする輪状の筋肉です。また、まっすぐ座れることや歩けることも含まれます。

心理的な準備は、子どもの心や意欲に関わる部分です。トイレトレーニングに参加しようとする気持ちがあり、指示を理解して従えることが大切です。つまり、身体的に「できる」だけでなく、そのプロセスに「参加しよう」とする心の準備が整っているかどうかが重要になります。

この2つの準備がそろっていると、トレーニングはスムーズに進みやすくなります。

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焦ることが「逆効果」になる理由

専門家は、子どもの発達は連続した流れの中で起こると指摘しています。「普通」とされる範囲には幅があり、子どもによって発達のスピードは違います。早産で生まれた場合や乳児期の病気などが、発達のペースに影響することもあります。そのため、ある子ができるようになった時期と、別の子ができるようになる時期が違っていても、あまり神経質になりすぎないようにと助言されています。

この大きな原則は、トイレトレーニングにもそのまま当てはまります。歩く・話すといったほかの発達と同じように、トイレの習得にも「その子なりのタイミング」があります。目標は「まだ準備ができていない段階で無理に進めること」ではなく、「準備が整ったときに、しっかり支えてあげること」です。

落ち着いた関わり方は、幼児の発達についてわかっていることともよく合致します。この時期の子どもは、自立心が育ち、好みがはっきりし、探索行動も活発になります。親とは別の「自分」という存在に気づき始め、世界のルールを探りながら境界を試すことも増えます。そのため、無理に何かを「させよう」とすると、子どもにとってはストレスになりがちです。本当に必要なのは、ガイドし続けることと、一貫した対応です。

トイレトレーニングの「からだ」の側面

トイレトレーニングに必要な身体的条件は、一見すると当たり前のようですが、とても重要です。子どもは、排尿や排便に関わる筋肉を自分でコントロールできなければなりません。このコントロールが十分でないうちは、どれだけ子どもや家族のやる気があっても、成功は難しくなります。

まっすぐ座れることも大切です。おまるやトイレに座るには、バランス感覚や姿勢が必要で、これは幼児期全体の身体発達ともつながっています。歩けることも重要で、自分でトイレまで行き、ある程度自立して行動するための土台になります。

こうした力は、幼児の発達全体の一部です。身体の成長には、体が大きく強くなることが含まれます。粗大運動発達とは、歩く・走る・ジャンプする・登るといった、大きな筋肉のコントロールのことです。微細運動発達は、小さな筋肉の動きを指し、自分で食べる・お絵かきする・物を扱うといった行動を支えます。トイレトレーニングは、こうした大きな発達の流れの中にあるスキルであって、まったく別個の能力というわけではありません。

「こころ」の準備も同じくらい大事

たとえ身体が十分に準備できていても、トイレトレーニングは理解と協力に支えられています。そこで重要になるのが、心理的な準備です。

指示に従える子どもは、トイレトレーニングの一連の流れを覚えやすくなります。この流れは、落ち着いて、いつも同じように教えられることが望ましいです。なぜなら、幼児はまだ言葉・自己認識・感情のコントロールを発達させている途中だからです。

幼児期の言語発達は、学びを支える大きな力になります。初めての言葉が出るのは平均して生後12か月ごろとされていますが、あくまで目安にすぎません。その後、語彙は増え続け、18か月ごろには言葉がぐんと増えることもあります。一日に7〜9語を覚えることもあり、そのころにはだいたい50語ほどの言葉を知っているとされます。21か月ごろには、「いくよ」「ママ、ちょうだい」「あかちゃん、あそぶ」など、二語文を話し始める子も多くなります。自分の欲求や気持ちを言葉で伝えられるようになると、トイレトレーニングのような日課もこなしやすくなります。

落ち着いて、同じ手順で教える

トイレトレーニングは、「子どもに何ができるか」だけでなく、「大人がどう教えるか」にも左右されます。落ち着いた、一貫した教え方は、成功するトレーニングの中核となる部分です。

一貫性は、子どもがパターンを学ぶ助けになります。また、落ち着いた対応が大事なのは、幼児が感情にとても影響されながら学ぶ存在だからです。幼児は強い感情を抱くことがあっても、それを年長児や大人のように表現する方法はまだ身についていません。こうした背景から、幼児期は「魔の2歳」と呼ばれ、かんしゃくが多い時期として知られることがあります。

かんしゃくは、空腹、不快感、疲れ、「もっと自分でやりたい」「自分の環境をコントロールしたい」という気持ちなどから引き起こされます。トイレトレーニングの最中も、こうした感情の現実が子どもの反応に影響します。急かしたり、ピリピリした雰囲気になると、難しい場面がさらにこじれやすくなりますが、落ち着いていて、その子の発達に合った対応ができると、少しずつでも前に進みやすくなります。

ここで重要なのが、大人のかかわり方です。幼児への声のかけ方やコミュニケーション次第で、かんしゃくを引き起こすこともあれば、逆に落ち着かせることもできます。これは、トイレトレーニングが「完璧でなければならない」という意味ではありません。大人の声のトーンや対応の一貫性も、学ぶ環境の一部である、ということです。

トイレトレーニングと幼児の自立

トイレトレーニングは、幼児期の大きなテーマである「自立の芽生え」と深く結びついています。

2歳ごろになると、多くの幼児は歩いたり走ったりよじ登ったりできるようになり、短いフレーズで話すことが増えます。語彙は急速に増え、好みをはっきり示したり、自分の意思をもって周りの世界を探るなど、自立した行動も目立つようになります。トイレトレーニングは、身体の感覚への気づき、コミュニケーション、自己コントロールといった要素を含む習慣を身につけるという意味で、この時期の発達と自然にかみ合っています。

また、このころは自己認識がよりはっきり見えるようになる時期でもあります。18か月ごろから、自分が「ひとりの人間」として存在し、自分なりの考えや行動があることに気づき始めます。そうした「自分」に対する認識の高まりとともに、恥ずかしさや誇らしさといった新しい感情も芽生えます。こうした感情は、トイレトレーニングの経験にも影響します。なぜなら、自分の身体や行動への意識が高まるプロセスでもあるからです。

成長の目安ではあるけれど、「競争」ではない

発達の節目(マイルストーン)は目安として役立ちますが、「早さを競うストップウォッチ」ではありません。いくつかの発達課題を早くクリアした子どもは、その後の知能との関連が見られたという研究もありますが、それでも専門家は、正常範囲のなかで到達しているのであれば、無理に早く進ませようとしないよう助言しています。

トイレトレーニングでは、この助言は特に大切です。周りの子と比べがちですが、幼児の発達には大きな個人差があります。もっとも実践的な問いかけは、「あの子はもうできているのか」ではなく、「この子は、からだとこころの準備ができているか」です。

準備が整った時点から始めることは、幼児が実際にどう成長していくかを尊重する姿勢です。身体のコントロール、言葉の発達、感情の成長、自立心——これらは互いに影響し合いながら育っていきますが、必ずしもまったく同じタイミングで進むわけではありません。

まとめ:いちばんの土台は「準備」

トイレトレーニングがうまくいきやすいのは、幼児の「からだ」と「こころ」の両方が準備できているときです。身体の準備とは、肛門括約筋と尿道括約筋を自分でコントロールでき、まっすぐ座れて歩けること。心の準備とは、やってみようとする意欲があり、指示を理解して従えることです。そのうえで、プロセスは落ち着いて一貫した方法で進め、保護者の関わり方が、少しずつの前進を支える形になることが望ましいでしょう。

幼児期において、「準備ができているかどうか」は小さなことではありません。それこそが、トイレトレーニングの土台なのです。

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