イヤイヤ期のかんしゃく:「魔の2歳」をひもとく

「イヤイヤ期」という言葉がよく知られているのには理由があります。幼児期には、子どもは認知面・感情面・社会性の面で大きく発達し、その激しい成長が劇的な行動として表に出ることがあります。一般的に幼児とは1〜3歳ごろの子どもを指しますが、定義には幅があります。この時期は、動き方・コミュニケーション・周りの世界との関わり方が急速に変化するのが特徴です。

かんしゃくはこの時期を象徴する行動のひとつですが、単なる「いきなりの爆発」ではありません。幼児の発達と密接に結びついています。小さな子どもたちは、歩く・走る・よじ登る・短い言葉で話す・自分の好みを伝える、といったことを学んでいる最中です。同時に、自分でできることが増え、自分は親とは別の一人の人間なのだという意識も芽生えていきます。

その組み合わせが「摩擦」を生みます。子どもはもっと自分でコントロールしたいのに、まだ年長の子どもや大人のように感情をコントロールしたり、言葉でうまく説明したりする力が備わっていないのです。

名前とは裏腹に、「イヤイヤ期」が必ず2歳ちょうどから始まるわけではありません。子どもや環境によっては、生後9か月ごろから始まることもあります。これは、幼児の心理的な変化がかなり早い段階から始まっていることを考えると、自然なことと言えます。

その早いサインのひとつが「指さし」です。子どもが、自分が見せたいもの・気づいてほしいものを指させるようになるのは、大きな心理的ステップです。世界そのものに興味を持つだけでなく、誰かの注意をそこに向けさせようとする意図が生まれているからです。これは多くの場合、1歳の誕生日を迎える前に見られます。

こうした力が育ってくると同時に、「フラストレーション」も生まれます。子どもは何かをはっきり欲しがったり、気づいたり、「イヤだ」と感じたりしていても、それを言葉で完全に説明する力はまだありません。一見すると突然のかんしゃくに見える行動も、実は急速に発達している心の表れかもしれません。

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大きな感情、限られた表現手段

幼児がかんしゃくを起こす大きな理由のひとつは、とてもシンプルです。強い感情を体験しているのに、それを年長の子どもや大人のようには表現できないからです。感情の世界はとても活発なのに、それを伝えるための「道具」であるコミュニケーション能力は、まだ発展途上なのです。

かんしゃくのきっかけになる「目の前の理由」は色々あります。空腹・不快感・疲れといった身体的な要因はよくあるものです。それに加えて、幼児は自立心が強くなり、周りの環境を自分でコントロールしたいという欲求も大きくなります。「自分でやりたい」「自分で決めたい」「どこまでできるか試したい」という気持ちが強いのです。

これが、なんでもないような場面が突然大変になってしまう理由のひとつです。幼児は、ただ「中断されるのが嫌」「『ダメ』と言われるのが嫌」というだけではないかもしれません。もっと大きな発達上の課題に直面している可能性があります。つまり、「自分は親とは別の存在なのだ」と気づきつつあるのです。

自立への強い欲求

幼児期に起こっている最も重要な変化のひとつが「自立」の芽生えです。2歳前後になると、多くの子どもは歩いたり走ったり、よじ登ったり、短いフレーズで話したりできるようになります。語彙は急速に増え、「これがいい」「これは嫌」といった好みも、よりはっきり表せるようになります。

こうした力はすべて、探求心を後押しします。幼児は世界を受け身で眺めているだけではなく、積極的に「試して」います。空間を探検し、物をいじり、選択を主張します。発達の観点から見ると、これは複数の分野に同時に関わっています。歩く・走る・よじ登るといった粗大運動、物を扱う細かい手先の動き、聞く力や話す力、遊びを通した社会的なやりとりなどです。

ただし、できることが増えても、「判断力」や「待つ力」はまだ成熟していません。幼児は、どんな場面でも「もう全部自分でできる」と感じてしまいがちですが、実際にはまだ大人の助けが必要です。そのギャップが、そのままかんしゃくにつながることがあります。

つまり有名な「かんしゃく」は、より大きなプロセスの一部でもあります。子どもは「自分の意志がどこまで通るのか」「どこからが自分の思いどおりにはいかない世界なのか」を体験しながら学んでいるのです。

なぜ言葉の発達がそれほど重要なのか

言葉の発達は、かんしゃくの背景を理解するうえで大きな手がかりになります。多くの子どもは、平均すると生後12か月ごろに最初の言葉を話すと言われていますが、あくまで目安です。その後、語彙は少しずつ増え、18か月ごろから急に増加することがよくあります。この時期には、1日に7〜9語も新しい言葉を覚える子もいて、全体として50語ほど知っていることもあります。

生後21か月ごろになると、「いく」「ママ ちょうだい」「ベビー あそぶ」といった2語文を組み合わせるようになります。寝る前の時間には、一人でベッド(またはベビーベッド)の中でおしゃべりを続ける「ひとり言」のような行動をとり、会話の練習をしていることもあります。

これは驚くほどの進歩ですが、それでも子どもが感じていることに比べれば、まだまだ限られています。欲しいものや必要なことは、以前より言葉で伝えやすくなっていますが、感情と表現のあいだには、まだ大きな「溝」が残っています。その溝こそが、フラストレーションの温床になるのです。

子どもは「言えること」よりも、ずっと多くのことを理解しています。また、「名前をつけられる感情」よりも、もっとたくさんの感情を感じています。そのとき、言葉が追いつかなければ、かんしゃくという形で爆発してしまうことがあります。

自分を意識し始めると、すべてが変わる

幼児の行動と深く関わる、もうひとつの大きな節目が「自己認識」です。生後18か月ごろになると、子どもは「自分には自分の体・考え・行動がある」という、ひとりの存在としての意識を持ち始めます。

この変化は「鏡映自己認知」という現象でよく示されます。有名な例に「ルージュテスト」があります。子どもの顔に口紅などで印をつけ、鏡を見せたとき、鏡に映った印を触るのではなく、自分の顔の印を触ろうとするなら、その子は鏡の中の姿を「自分だ」と認識していると考えられます。

この発達は、感情の面でも重要です。自分を認識できるようになると、それまであまりなかった「恥ずかしさ」や「誇らしさ」といった感情を体験し始めます。

つまり、幼児の感情世界は、単純になるどころか、ますます複雑になっていきます。かんしゃくは、こうした内面の世界が広がっていく途上で起きているのです。

大人の関わり方で、悪化もすれば落ち着きもする

親や養育者が幼児にどのように声をかけるか・関わるかは、かんしゃくを誘発することもあれば、逆に落ち着かせることもあります。これは非常に重要なポイントです。幼児が世界を探検しているこの時期、大人の反応は単なる「背景」ではなく、その場の出来事そのものを形づくる要素になります。

研究によると、一部の親は、幼児のかんしゃくに対して「発達段階に合った、丁寧で敏感な対応」をすることが難しくなる場合があるとされています。特に、虐待を受けた経験がある親、暴力的な環境にさらされて育った親、関連する精神的な不調を抱える親などでは、その傾向が強まる可能性があります。

ここでいう「虐待」とは、身体的・心理的な暴力や、重大なネグレクト(養育放棄)などを指します。「暴力への曝露」とは、頻繁な暴力行為や傷つけ合いが身近にある環境で育つことです。「サイコパソロジー」とは、思考・感情・行動に影響を及ぼすさまざまな心の不調を含む広い概念です。こうした状況にある場合には、親子のメンタルヘルス相談が役に立つことがあります。これは、専門家が親と子どもの関わり方を一緒に振り返り、よりよい応答の仕方を探るための支援です。

ここで大切なのは、「かんしゃくは単一の原因から起こる」という話ではないということです。かんしゃくは、常に「関係性の中」で起こっています。幼児はものすごいスピードで発達しており、そのときどきの大人の反応が、嵐を強めることもあれば、静めることもあるのです。

人生の後半にも響くステージ

2〜5歳ごろに見られる「自立したい」という強い欲求は、一度消えてなくなるわけではありません。思春期になると、形を変えて戻ってきます。どちらの時期も、「急速な発達のさなかに、より大きな自立を求め、境界線を試す」という点で、とてもよく似ています。

もちろん、幼児のかんしゃくと思春期の葛藤が同じものというわけではありません。ただ、どちらも「より自立した自分になる」という大きなテーマでつながっています。

こうして見てみると、「イヤイヤ期」は単なる混乱や騒がしさの問題ではありません。子どもが身体的・社会的・感情的・認知的に成長していく、正常な発達プロセスの一部です。発達は連続したプロセスであり、子どもによってペースは大きく異なります。専門家たちは、子どもはそれぞれ自分のペースで育つと指摘しており、とくに早産だった場合や乳児期の病気など、発達をゆるやかにする要因があるときには、「月齢どおりにすべての節目を迎えないから」といって過度に心配しすぎないようにと助言しています。

成長のサインとしてのかんしゃく

かんしゃくは、見ている大人にとってはとても疲れるものです。しかし同時に、幼児期に起きる驚くべき変化と深く結びついています。この数年間で、子どもは歩く・走る・ジャンプする・よじ登るなどの大きな筋肉のコントロールを獲得します。自分で食べる・お絵かきをする・物をあやつるといった細かい動きも発達します。聞く力・話す力・言葉を理解する力が伸び、それを使って気持ちや考えを伝えられるようになっていきます。社会的にも、友だちと遊ぶ・順番を待つ・ごっこ遊びをするなどの経験を通して学んでいきます。

このような成長の積み重ねが、「圧力」を生みます。幼児は、以前よりもずっと強く「欲しい」「感じる」「動く」「気づく」「探検する」「抵抗する」ようになります。その結果としてのふるまいが、いつも洗練されているとは限りません。

だからこそ、「イヤイヤ期」は性格の問題というより、「発達の十字路」として理解するほうが適しています。かんしゃくは多くの場合、「成長している子どもが、今の自分の能力の限界とぶつかるときに起きること」です。

そして、そのぶつかり合いはどれほど騒がしくても、「人として生きること」を学んでいくプロセスの一部なのです。

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