幼児の発達:みんな同じペース? そうでもない

幼児の発達について話すとき、つい「きれいな予定表」を思い浮かべてしまいがちです。最初の一歩を踏み出す時期、初めて言葉を話す時期が決まっていて、すべてが決まった順番で進むようなイメージです。けれど、現実はもっと複雑で、もっとおもしろいものです。幼児の発達は「連続体(コンティニューム)」で起こります。つまり、カチッとした境目があるのではなく、なめらかな幅のなかで進んでいくということです。

一般的に、幼児とはおよそ1〜3歳ごろの子どもを指しますが、定義には幅があります。この時期は、認知、感情、社会性などの面で大きな発達が見られる時期です。「幼児(toddler)」という言葉自体も、この年齢でよく見られる変化を表しています。語源の「toddle」には「よちよち歩く」という意味があります。

2歳ごろになると、多くの幼児は歩いたり走ったり、よじ登ったり、短いフレーズで話したりするようになります。語彙が急速に増え、自分の好みを示したり、周囲を探検したりしながら、以前よりもずっと強い自立性を見せ始めます。ただし、こうした大まかなパターンは多くの子どもに共通していても、その正確なタイミングは子どもによって大きく異なります。

連続体というのは、あらゆる瞬間に「正常」と「正常でない」をくっきり分ける線があるわけではない、ということです。発達は途切れなく続いており、子どもはそれぞれ違うスピードで進んでいきます。早く歩き出す子もいれば、話し始めるのが遅い子もいます。ある分野ではぐんと伸びる一方で、別の分野はゆっくり進むように見える子もいます。

何が「正常な発達」とみなされるかには、かなり広い幅があります。そのため、年齢別の「発達の目安」は、厳密な締め切りというより「ガイド」として役立つものです。専門家は、一般的にどの年齢までにどのようなスキルが身についていることが多いかを示しますが、それと同時に「子どもはそれぞれのペースで発達する」ことも強調しています。

養育者にとって、この違いはとても重要です。発達の目安は、成長の経過を見守ったり、サポートが必要かどうかに気づいたりするのに役立ちますが、「幼児期を競争にする」ためのものではありません。ほかの子より少し遅れてあるスキルを身につけたからといって、それだけで「発達が遅れている」とは限らないのです。

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幼児の発達が示す主な領域

幼児の発達は、いくつかの相互に関連した領域から説明されることが多いです。「相互に関連している」というのは、ある領域の成長が、別の領域の発達を支えたり影響したりする、という意味です。

主な領域には次のようなものがあります。

身体発育

身体発育とは、体の大きさが増すなどの「成長」を指します。もっとも広いカテゴリーであり、多くの人がまず目にする変化を含みます。

粗大運動能力

粗大運動能力は、歩く・走る・跳ぶ・よじ登るといった大きな筋肉をコントロールする力です。幼児期がとてもドラマチックに見える一因がここにあります。子どもが突然、ずっと自由に、広い世界を自分の体で移動できるようになるからです。

微細運動能力

微細運動能力は、小さな筋肉をコントロールする力です。スプーンで自分で食べる、絵を描く、物をつまんだり操作したりするといったことができるようになります。走ったりよじ登ったりするのに比べると目立たないかもしれませんが、自立していくうえでとても重要な能力です。

視覚

視覚には、近くや遠くを見る力だけでなく、「見たものを理解する力」も含まれます。つまり、「ものを見ることができるかどうか」だけではなく、「見たものの意味をどのくらい理解できるか」が大切になります。

聴覚と言語

この領域には、音を聞き取り情報を受け取る力、音に注意を向けて聞く力、その意味を解釈する力、そして言語を理解し学んで、効果的にコミュニケーションできるようになる力が含まれます。

社会性の発達

社会性の発達には、ほかの子と一緒に遊ぶ、順番を待つ、ごっこ遊びをするなど、周囲の世界と関わる力が含まれます。こうした力は、人との付き合い方を学んでいくうえで、とても初期の土台となるものです。

これらの領域はすべてつながっているため、発達が「きれいに揃って」進むことはほとんどありません。運動面ではとても進んでいるように見える子が、言葉はゆっくりだったり、逆にとても社交的だけれど身体的なスキルはこれから、という子もいます。

それでも発達の「目安」が大切な理由

発達に個人差があるからといって、「目安」が意味をなさないわけではありません。発達の目安とは、「何歳ごろにはこのスキルが身についていることが多い」といった期待される力のことです。最初の一歩や最初の言葉などがその例です。これらは、幼児期にどのような力がどの程度身についていることが多いかを、大まかに整理したものです。

目安が大切なのは、大幅に遅れて目安を達成することが、知的障害や身体障害と関連していることが昔から知られているからです。専門家が発達のタイミングに注意を払う理由のひとつもここにあります。

一方で、専門家は「タイミングの違いひとつひとつに過度に反応しないこと」も呼びかけています。子どもが「正常な範囲のなかで」目安を達成しているのであれば、無理に急がせる必要はありません。目的は「早くできるようにさせること」ではなく、「発達がどのように進んでいるのかを見守ること」です。

ペースが違う=問題がある、とは限らない

幼児のなかには、あるいは複数の領域で、単に時間がかかる子もいます。医学の専門家は、「年齢別の目安どおりにぴったり達成できないからといって、過度に心配しないでほしい」と指摘します。

特に、発達のペースがゆっくりになる可能性がある要因として挙げられているのが、早産と乳児期の病気です。早産とは、妊娠期間がふつうより短い状態で生まれることで、その後の発達のタイミングに影響することがあります。乳児期の病気も、発達を一時的にゆっくりさせる要因になりえます。

とはいえ、大事なのはもっと大きな全体像です。重要なのは、その子が発達を続け、広い意味で「正常範囲」のなかで目安を達成しているかどうかです。

早い発達の目安と、その後の知能との関係

研究からは、初期の発達のタイミングが、その後の知能とある程度関係している可能性が示されていますが、その関係は単純ではありません。

たとえば、1946年にイギリスで生まれた5,000人以上の子どもを対象にした2007年の研究では、「立つことを覚えるのが1か月早いごとに、8歳のときの知能指数(IQ)が0.5ポイント高くなる」という結果が出ました。IQ(Intelligence Quotient、知能指数)は、いくつかの研究で認知能力の側面を測るために用いられるスコアです。

2018年の別の研究でも、発達の目安を達成するタイミングと、大人になってからの知能には関係があることが示されました。この研究では、「絵の中の物や動物の名前をどれくらい早く言えるようになったか」「どれくらい早く文を作れるようになったか」などが指標として使われました。24か月(2歳)より前に文を作れるようになった子は、若年成人期の平均IQが107で、24か月以降に文を作れるようになった子の平均IQは101でした。

とはいえ、初期の発達タイミングは全体の一部しか説明しませんでした。この研究では、初期の発達の目安と3歳までの頭囲の情報を合わせても、大人になってからのIQのばらつきの約6%しか説明できませんでした。対照的に、親の社会経済的地位や子どもの性別は、IQのばらつきの約23%を説明していました。

つまり、「早く目安を達成する子のほうが、平均するとわずかに知能が高い傾向がある」可能性はあるものの、専門家はそれでも「正常な範囲で進んでいる限り、子どもを急かして目安を早くクリアさせようとする必要はない」としています。

言葉の発達のタイミングをもう少し詳しく

「話すこと」は、多くの親がとくに気にかける発達の目安のひとつです。幼児の最初の言葉は、生後12か月ごろに出ることが多いとされていますが、あくまで平均的な目安です。

そこから語彙はゆっくり増えていき、およそ18か月ごろにぐっと増加することがあります。この時期、一日に7〜9語ほど新しい言葉を覚える子もいます。このころには、知っている言葉がだいたい50語ほどになっていることが多いとされます。

およそ21か月ごろになると、「I go(いく)」「mama give(ママ ちょうだい)」「baby play(赤ちゃん あそぶ)」のような二語文を組み合わせるようになる子が増えます。寝る前には、一人でおしゃべりを続ける「クリブトーク(crib talk)」と呼ばれる独り言のような時間が見られることもあります。これは、自分に向かって話しかけながら会話のスキルを練習していると考えられています。この年齢になると、多くの子どもが、自分の欲しいものや必要なことを、言葉を使ってかなり上手に大人に伝えられるようになってきます。

この流れは、「ひとつのタイムラインでは説明しきれない」良い例です。平均的な目安はあるものの、言葉の伸び方は子どもによって大きく異なっていても、それでも十分「正常な発達」の範囲に含まれます。

感情の発達にも、独自のペースがある

大きな発達の目安は、歩く・話すといった「目に見えやすい」ものだけではありません。幼児期には、感情や心理面の発達も進んでいきます。

重要な目安のひとつが、「自分が見てほしいものを指さす」という行動です。これは通常、1歳の誕生日を迎える前に見られることが多く、大きな心理的成長を反映しています。

また、この時期のよく知られた特徴として、「イヤイヤ期(terrible twos)」があります。激しいかんしゃくで知られる時期で、子どもや環境によっては、生後9か月ごろから始まることもあります。幼児がかんしゃくを起こしやすいのは、感情がとても強いのに、まだ年長児や大人のようにそれを上手に表現する方法を知らないからです。

直接のきっかけとしては、空腹、不快感、疲れ、もっと自分で決めたい・自分でやりたいという気持ちなどが挙げられます。多くの面で、幼児は「自分は親とは別の存在である」と実感し始め、世界の仕組みを学びながら、境界線を試しているのです。

こうした感情の激しさも、「カチッとしたタイムラインでは現実をとらえきれない」理由のひとつです。発達は、「あるスキルができるかどうか」だけではありません。感情をどう扱うか、人とどう関わるか、「自分は自分だ」と感じるようになるプロセスも含めての発達なのです。

養育者にとっての「大きな見取り図」

幼児の発達を考えるときにいちばん役立つのは、「ストップウォッチ」ではなく「パターン」としてとらえることです。発達の目安は実在し、とても重要です。幼児がどのような力を身につけていくのかを説明し、時に「追加の支援が必要かもしれない場面」を教えてくれます。

同時に、幼児期は個人差が非常に大きい時期でもあります。発達の主な領域については大きな共通点がある一方で、その変化が「いつ」「どのような形で」現れるかは、子どもによってかなり違います。

つまり、ペースが遅めだからといって、それだけで問題のサインとは限らないのです。早産や病気によってタイミングがずれることもありますし、ある分野はぐんと進み、別の分野はゆっくり進む子もいます。もっとも大切なのは、「完璧に共通のカレンダーどおりに進むこと」ではなく、「大きな意味で正常範囲のなかで、少しずつでも発達を続けているかどうか」です。

幼児の発達は、共通する「ランドマーク(目印)」が並んだ旅路のようなものです。しかし、そこに「一本きりの道」や「ひとつのタイムライン」があるわけではありません。通る道のりは似ていても、そのタイミングは子どもごとに違うのです。

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