気候を左右するもの

なぜ、ある場所は涼しくて雨が多いのに、そのそれほど遠くない場所は暑くて乾燥してしまうのでしょうか。気候は、その日の天気だけで決まるものではありません。ふつう30年間程度の長期的なパターンを平均したものを指し、地理的な特徴、水の動き、さらには生き物に覆われた景観など、さまざまな要因に左右されます。

こうしたことから、ある地域は凍えるように寒く、別の地域は焼けつくように暑く、さらにその中間の場所もある理由が見えてきます。

考え方のコツとして、「天気」はその日その日の状態、「気候」は長い目で見て予想される状態だと言えます。気候には、気温、風、降水量といった平均的な条件が含まれますが、それだけでなく、それらの条件が日々・年々どれくらい変動するかも含まれます。

気候学者は、その場所らしさを示す基準として「平年値」と呼ばれる30年平均をよく使います。この期間は、短期的な変動や例外的な揺らぎをならしつつ、長期的な傾向は見えるようにするには十分な長さです。

「気候を決める要因は何か」と問うとき、私たちは実際には、そうした長期的なパターンをつくっているものは何かを尋ねているのです。

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緯度:古典的な「気候の決定要因」

最大の要因のひとつが緯度、つまり赤道からどれだけ離れているかです。緯度は古代から、気候を形づくる大きな要因として認識されてきました。大まかに言えば、ある地域が長期的にどれくらい太陽エネルギーを受け取るかを左右します。

そのため、気候帯はしばしば緯度との関係で区分されてきました。また、温度パターンが変わると、多くの生物種が高緯度側や高い標高へ移動していく理由のひとつでもあります。

緯度は、短命な天気現象とは違い、歴史的な時間スケールではほとんど変わらない、より安定した気候の支配要因です。

標高と地形は局所的な条件を変える

標高も重要です。海抜の高い場所は、近くの低地とはまったく違う気候になることがあります。たとえ2つの地点が同じ緯度にあっても、標高が違えば、長期的な条件は別々のものになります。

地形もまた役割を果たします。地形の形は、空気の流れ方や地域の気象条件の成り立ちに影響します。山脈などの地形は、比較的短い距離の中でも気候に大きな差が生まれる一因です。

この記事では、山地への近さも、気候を左右する長期的な変数のひとつとして挙げられています。言い換えると、大地そのものが気候パターンの「ガイド役」をしているのです。

陸と海は同じではない

ある場所の周囲に、陸と水がどのくらいの割合で存在するかも重要な気候要因です。水域は近くの気候に影響し、とりわけ海洋は熱をためこみ、運ぶ働きがあるため、大きな役割を持ちます。

その影響は海岸線で途切れるわけではありません。近くの海や湖、そこを流れる海流は、内陸部や広い沿岸地域の気候を大きく変えることがあります。場所の気候に影響する要因のひとつとして経度も挙げられますが、海洋とその大循環は、地理がなぜ重要なのかを示す代表的な例と言えます。

海流は「気候そのもの」を運ぶ

もっとも印象的な気候の支配要因のひとつが、海水そのものの移動です。熱塩循環(サーモハライン循環)は、水温と塩分濃度の違いによって駆動される、地球規模の海洋循環システムです。これらの違いは海水の密度を変えるため、海洋全体にわたる大規模な循環を生み出します。

これは小さな効果ではありません。熱塩循環により、北大西洋は他の海盆と比べておよそ5℃ほど温かくなっています。これは、水の移動だけで生じる、非常に大きな気候への影響です。

そのほかの海流も、より地域的なスケールで、陸と海の間の熱の再分配を行っています。ある海岸地域が想定よりも温暖だったり、冷涼だったり、雨が多かったりする場合、その背景には海の働きが大きく関わっていることが多いのです。

植生も地域の気候をつくる

気候を決めるのは空気と水だけではありません。植物による覆い方も重要です。

植生の密度や種類は、地表がどれだけ太陽熱を吸収するか、水をどれくらい保持できるか、そして地域レベルで降水がどう振る舞うかに影響します。つまり、森林や草原などの植生は、気候システムの「乗客」ではなく、「参加者」なのです。

植生が変化すれば、局所的あるいは地域的な気候条件が変わりえます。このことから、土地利用が、その場所の気候に影響する要因のひとつとして挙げられているのです。景観を変えれば、熱の吸収量、水分のふるまい、降雨パターンも変化する可能性があります。

気候は大きなシステムの一部

より大きな視点で言えば、気候とは、地球システムを構成する複数の部分(大気圏、水圏、雪氷圏、岩石圏、生物圏)と、それらの相互作用の状態そのものです。

名称は少し専門的ですが、基本的な考え方は単純です。

  • 大気圏は空気の世界。
  • 水圏は地球上の水の世界。
  • 雪氷圏は氷や雪などの凍った水の世界。
  • 岩石圏は地球の固い外側部分。
  • 生物圏は生き物が暮らす世界です。

気候は、これらすべての相互作用から生まれます。だからこそ、海流、山脈、植生の変化、温室効果ガスの増減といったものが、いずれも気候にとって重要になりうるのです。

安定した要因と、変わりやすい要因

歴史的な時間スケールでは、いくつかの気候要因は比較的安定しています。たとえば緯度、標高、陸と水の割合、海や山への近さなどです。これらが変化するのは、多くの場合、プレートテクトニクスなどによる数百万年単位の地質学的プロセスを通じてです。

一方、はるかに動的な要因もあります。海洋循環は熱を移動させます。植生の広がりは、地域の熱吸収量や降水を変化させます。特に二酸化炭素やメタンといった大気中の温室効果ガスは、地球が蓄える太陽エネルギーの量を変え、それによって温暖化や寒冷化を引き起こします。

つまり、気候は「地球の基本レイアウト」のような固定的な要素と、気候システム内部の変化しやすいプロセスの両方によって形づくられているのです。

気候帯をきれいな線で区切れない理由

気候区分のシステムは、世界をわかりやすい気候帯に分けようとします。多くの場合、気温と降水量が指標として使われます。最も広く利用されているのはケッペンの気候区分で、ほかにソーンスウェイトの区分などでは、蒸発散(蒸発と植物による水の放出を合わせた、水が大気中へ移るプロセス)も考慮されます。

しかし、自然は必ずしもきれいな境界線に従ってくれるわけではありません。分類法のよくある弱点は、はっきりした区分線を引いた気候帯をつくってしまうのに対し、実際の気候特性は空間的に徐々に変化していくことが多い点です。

これは、気候の支配要因を考えるときにも重要です。緯度、標高、海洋、海流、地形、植生は、必ずしも明瞭な境界を生むわけではなく、しばしば「移り変わりの帯」をつくります。

気候を支配する要因も時間とともに変わる

気候は永遠に固定されたものではありません。「気候変動性」とは、個々の天気イベントより長い時間スケールで、平均状態やその他の気候特性が変化することを指します。その一部は一見ランダムに見えますが、一定の周期性をもつパターンもあります。

「気候変動」は、数十年から数百万年のスケールで、地球全体または特定地域の気候が変化することを指します。こうした変化は、地球内部のプロセス、太陽放射の強さの変化といった外的要因、人間活動などから生じます。

近年の議論では、この言葉はしばしば現代の地球温暖化を指す意味で使われます。コペルニクス気候変動サービスによると、2023年2月から2024年1月にかけての平均全球気温は、産業革命以前と比べて1.5℃の上昇を超えました。

気候が変われば、その地域を支配していたパターンも変わります。温帯域では、年間平均気温が3℃変化すると、等温線(同じ気温の地点を結んだ線)はおよそ緯度で300〜400km、標高で約500m移動することに対応します。等温線が移動すれば、多くの生物種も、より高い標高や高緯度方向へと移動していくと予想されます。

まとめ:大きな視野から見た「気候を決めるもの」

気候を支配する要因をひとつに絞ることはできません。

緯度は大まかな枠組みを決めます。標高と地形は、それを地域レベルで作り替えます。海と海流は、地域の気候を何度分も押し上げたり、下げたりできるほど強力です。植生や土地利用は、熱の吸収、水分の保持、降水パターンに影響します。そしてこれらすべてが、大気、水、氷、陸地、生物がつながった大きな気候システムの中で作用しています。

だからこそ、ある場所は凍えるように寒く、別の場所は焼けつくように暑くなるのです。気候とは、陸・海・空にまたがる多くの力が長い時間をかけて織りなす結果なのです。

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