地球は、表面に安定した液体の水が存在し、何十億年ものあいだ生物圏が惑星そのものを作り変えてきた、唯一知られている世界です。しかし、この住みやすさのバランスは永遠ではありません。非常に長い時間スケールで見ると、地球の未来は太陽の放射の変化と結びついており、その結果は劇的になりえます。二酸化炭素が多くの植物にとって致命的なほど低くなり、やがて海洋が蒸発し、最後には太陽が大きく膨張する段階で、地球が広い軌道に生き残るのか、それとも呑み込まれてしまうのかが決まるかもしれません。
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バランスによって住みやすくなった惑星
現在の地球の表面環境は、きわめて繊細な均衡のうえに成り立っています。大気には温室効果ガス、とくに水蒸気と二酸化炭素が含まれており、これらが太陽から届くエネルギーの一部を閉じ込め、平均気温を約14.76℃ほどに保っています。この熱保持効果がなければ、地表の平均気温はおよそ−18℃となり、現在のような形の生命はおそらく存在できなかったでしょう。
地球がとくに特異なのは、液体の表層水を維持している点です。地球上の水のほとんどは全球の海にあり、地殻の約70.8%を覆っています。この海と大気が組み合わさることで熱を蓄え、惑星全体へ運ぶ役割を担い、気候を調整しています。
しかし、今日の地球を居住可能にしているこの仕組みは同時に、太陽エネルギーの長期的な変化に地球が敏感であることも意味します。
太陽はゆっくりと明るくなっている
地球は約45億年前に形成され、その長期的な未来は太陽の進化と密接に結びついています。今後約11億年で、太陽光度(太陽が放つエネルギーの総量)はおよそ10%増加すると予測されています。約35億年後までには、約40%増加する可能性があります。
太陽光度とは、太陽が放出するエネルギー量そのものを指します。増加のペースは緩やかでも、惑星スケールの時間で見れば無視できません。入射エネルギーが増えれば地表の温度は高くなり、蒸発が強まり、大気を安定させている化学サイクルにも大きな変化が生じます。
これが地球の「深い未来」を考えるうえでの重要なポイントです。地球が住めない世界になるのに、突発的な大災害は必須ではありません。太陽が少しずつ明るくなるだけで十分なのです。
岩石風化と植物にとってのCO2問題
最初に訪れる大きな脅威は、海が沸騰することではなく、植物が「飢える」ことかもしれません。
地球が温暖化すると、無機的な炭素循環は加速すると考えられています。その過程でとくに重要になるのが岩石の風化です。風化とは、化学反応や水、大気中のガスによって岩石が分解されていく現象です。長い時間スケールでは、こうした反応が大気中から二酸化炭素を取り除いていきます。
二酸化炭素は温室効果ガスなので、一見すると良いことのように思えるかもしれません。しかし植物は光合成のためにCO2に依存しています。長期的な予測によれば、現在の植物にとって致死的に低い濃度にまで二酸化炭素が下がるのは、今からおよそ1億〜9億年後と見積もられています。この記事では、C4光合成が機能できる限界の目安として、CO2濃度10 ppm(100万分の10)が挙げられています。
C4光合成とは、一部の植物が高温や乾燥条件でも効率よく二酸化炭素を取り込むための仕組みの一つです。その経路さえ成り立たなくなるとすれば、その影響は計り知れません。
植生のない世界
植物が消滅すれば、その影響は森林や農地の枠をはるかに超えて広がります。植物は大気の組成と深く結びついており、植生がなくなると、いずれ大気中の酸素も失われ、現在の動物は生存できなくなります。
これは地球史におけるきわめて大きな転換点となるでしょう。生命は何十億年にもわたって大気を作り変えてきました。酸素発生型の光合成は約27億年前に進化し、現在のような窒素・酸素主体の大気を生み出す一因となりました。大気中の酸素から形成されるオゾン層も、太陽の強い紫外線の多くを遮ることで、生命を保護しています。
もし遠い未来に植物が崩壊してしまえば、生命と大気のあいだで続いてきたこの長い協調関係は、ほどけ始めることになります。
温暖化から暴走温室へ
地球の未来をめぐるもっとも劇的なシナリオの一つが、「暴走温室効果」です。
温室効果とは、大気中のガスが地表から放射される熱エネルギーを吸収し、惑星を温める現象です。水蒸気はすでに地球における主要な温室効果ガスの一つです。暴走温室状態になると、温暖化によって水の蒸発が増え、大気中の水蒸気がさらに増加し、それによっていっそう温暖化が進む——というフィードバックが暴走します。その結果、地表の水がもはや安定して存在できなくなるところまで行き着きます。
長期的な見通しでは、およそ15億年後に地球の平均気温が100℃に達する可能性が示されています。その段階では、海の水はすべて蒸発して宇宙空間へ失われるおそれがあり、およそ16億〜30億年後のあいだに暴走温室効果が本格的に引き起こされる可能性があります。
そうなれば、地球は海に満ちた世界から、はるかに敵対的な姿へと一変します。現在、海洋は巨大な熱の貯蔵庫として働き、気候・天候・水循環の中心的存在です。それを失うことは、熱の分配、降水の源、既知のほとんどの生態系を支える仕組みそのものを失うことを意味します。
なぜ海はそれほど重要なのか
地球の海は、惑星に存在する水のおよそ97.5%をたたえ、3億6,180万平方キロメートルを覆っています。平均水深は3,682メートルです。海は熱を蓄え、大規模な海洋循環・大気循環を駆動することで、気候に強い影響を与えています。
また水は、海・大気・陸のあいだを絶えず循環しています。蒸発、雲の形成、降水、河川、地下水はすべてつながった一つのサイクルです。この水循環は、陸上の生命を支えるうえで不可欠な仕組みとして描かれています。
だからこそ、将来起こりうる「海の蒸発」は、地球の未来における単なる細部ではありません。惑星が持つもっとも基本的な生命維持システムの一つが崩壊することを意味します。
太陽が変わらなくても、地球は水を失う
遠い未来を考えると、さらに興味深い可能性も浮かび上がります。たとえ太陽が安定して永遠に輝き続けたとしても、現在の海水のかなりの部分は、時間とともにマントルへ沈み込んでいくというのです。その理由として、地球の核がゆっくり冷えることで中央海嶺からの水蒸気の噴出が減少する、という点が挙げられています。
これは、地球の居住可能性が太陽だけでなく、惑星内部の進化にも左右されることを示しています。地球が地質学的に活動的でいられるのは、形成時に残された原始熱や放射性元素の崩壊による放射性熱など、豊富な内部熱を今なお抱えているからです。この熱がマントル対流やプレートテクトニクスを駆動しています。
地球内部が変化していくにつれ、海の長期的な運命さえも変わりうるのです。
太陽の最終幕:赤色巨星段階
地球の未来で最もよく知られた章は、はるか後、約50億年後に太陽が赤色巨星になるときに訪れます。
赤色巨星とは、恒星が進化の後期段階で大きく膨張した状態を指します。モデルによると、太陽は現在の約250倍の半径にまで膨らみ、およそ1天文単位、すなわち約1億5,000万キロメートルの大きさに達するとされています。
天文単位(AU)は、現在の地球と太陽の平均距離を表す単位です。地球は現在、太陽からおよそ1 AUの軌道を回っています。したがって太陽がその規模まで膨張すれば、地球の運命は不確かになります。
地球は逃れるのか、それとも呑み込まれるのか
見通しはまだ完全には固まっていません。太陽が赤色巨星になる過程で、その質量のおよそ30%を失うと予測されています。もし潮汐効果を無視できるなら、太陽が最大半径に達するころ、地球の公転軌道は約1.7 AUまで外側へ広がるはずです。
潮汐効果とは、重力相互作用によってエネルギーや角運動量がやり取りされ、軌道が変化する現象です。これはすでに地球と月の系でも重要な役割を果たしており、潮汐を生み、地球の自転を徐々に遅くしています。
遠い未来には、この潮汐効果が地球の生き残りにとって決定的な要素となるかもしれません。一つの可能性は、地球が外側へと押し出され、直接呑み込まれるのを免れるシナリオです。もう一つ、より厳しい可能性は、潮汐効果によって地球が太陽の外層大気の中へと引き込まれ、惑星そのものが蒸発し、重い元素は死にゆく太陽の中心部へ沈んでいく、という結末です。
つまり地球の最終章は、焼き尽くされながら外側へ逃れるのか、あるいは生命を育んだ恒星の内部に完全に消え去るのか、そのどちらかになるかもしれないのです。
「住める世界」であることは一時的な状態にすぎない
人間の時間感覚からすると地球はとても安定して見えますが、それは私たちの時間スケールが惑星の時間スケールに比べてあまりに短いためです。はるかな未来を見通すと、「居住可能性」は生まれつきの恒久的な性質ではなく、太陽からのエネルギー供給、大気の化学組成、液体の水、地質活動、さらには生命そのものといった要素が組み合わさって維持されている、一時的な状態であることがわかります。
いまのところ、地球はダイナミックな大気と活動的なプレートテクトニクスを備えた「海の惑星」であり、巨大な生物圏を支える気候システムを保っています。しかし、今後数億年から数十億年のあいだに、このバランスは変化していくと見込まれています。まず、植物が二酸化炭素不足に直面する可能性があります。さらに先には、気温が上昇して海が蒸発し得る段階に達するかもしれません。最後に、太陽が赤色巨星へと膨張することで、地球が一時的に広い軌道で生き延びるのか、それとも、そもそも生命を可能にしたその恒星の内部へと呑み込まれてしまうのかが決まるでしょう。
非常に長い時間軸で見れば、地球の未来とは、ゆっくり進む変化がやがて巨大な結果をもたらす物語なのです。