視覚芸術:なぜ写真は「光で描くこと」なのか

写真(photography)という言葉はどこか詩的ですが、その語源はとても文字どおりでもあります。語源はギリシャ語の phos(光)と graphê(描くこと・書くこと)。この2つが合わさって、photography は「光で描くこと」という意味になります。

これは単なる比喩ではありません。あらゆる写真の核心にある、いちばん基本的なプロセスをそのまま表しています。被写体から来る光が、一定時間の露光のあいだに記録されて、像=写真が生まれるのです。

視覚芸術の世界では、写真は絵画、素描、彫刻、版画、映画、建築、デザインなどのイメージ表現と並ぶ存在です。そのなかで写真を特徴づけているのは、「痕跡(マーク)をつける」のが光そのものだという点です。絵筆で絵の具を載せたり、道具で線を引いたりする代わりに、写真家はカメラを使って、物体から反射・放射される光のパターンをとらえます。

根本的には、写真とは「光の作用によって像を作ること」です。カメラをある光景に向けると、目の前のものから出た光が、感光材や記録用のチップに届きます。その入ってきた光が、決められた時間だけ露光されて記録されます。

露光とは、カメラが光を取り込むことを許している時間そのものを指します。これは機械式のシャッターによっても、電子的に制御された光子(フォトン)の露光によっても行われます。機械式シャッターは、カメラ内部で開閉して、光が入ってこられる時間を物理的にコントロールする装置です。電子式システムでは、動く「幕」ではなく、デジタルな制御によって露光時間が決まります。

こうして記録された光は、化学的な処理を経る場合もあれば、カメラと呼ばれるデジタル機器の中でデータとして扱われる場合もあります。どちらにせよ原理は同じで、「光が痕跡を残す」のです。だからこそ「光で描く」という名前がこれほどしっくりくるのでしょう。カメラは何もないところから場面を作り出しているわけではありません。世界が生み出している光のパターンを記録しているのです。

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「光のパターン」とは何か

「光のパターン」という言い方は少し専門的に聞こえますが、考え方はシンプルです。私たちの周りにある物体は、それぞれ光を反射したり、放射したりする仕方が違います。明るい壁、影の中の顔、光るランプ、窓に差し込む日光——すべてが異なる見え方=光のパターンを作っています。写真は、その違いをそのまま記録します。

この性質のために、写真は「タイミング」と強く結びついています。写真がとらえるのは被写体だけではなく、「光があるかたちと強さをしていた、その瞬間」でもあるのです。露光時間が少し違うだけで、最終的な写り方も変わってきます。そういう意味で、カメラは単に景色を保存する装置以上の存在です。「ある一瞬の光」をとらえて閉じ込める道具なのです。

こうした理由から、写真は視覚芸術の世界で大きな役割を担うようになりました。流れ去ってしまう視覚情報を、持続するイメージへと変えることができるからです。ぱっと見は何気なく見える一枚の写真でも、その裏側には「光・時間・記録面」の精密なやりとりがあります。

写真から「イメージ」へ

もともと、写真技術によって生まれた成果物は photograph(写真)と呼ばれていました。それを縮めた photo という言い方も一般的です。しかし、時代が進むにつれ、より広い意味で image(イメージ)という語が使われるようになりました。

この変化は、画像が撮影され、理解されるあり方の変化を反映しています。電子的な撮像が広まるにつれ、従来の photograph という語では、すべての出力をうまく言い表せなくなってきました。image はもっと幅広い概念です。従来どおりの写真撮影による像も指せますし、デジタルでの記録や、光学・コンピューティングの世界に広がる「画像表現」全般も含むことができます。

言葉づかいの変化は、写真というメディアが変化しながらも、核心の原理は変えずにきたことの表れでもあります。成果物を photograph と呼ぶか、photo と呼ぶか、image と呼ぶかにかかわらず、その出発点はいつも「光が記録されること」にあります。

なぜ写真は視覚芸術に含まれるのか

視覚芸術には、絵画、素描、版画、彫刻、陶芸、写真、映像、イメージ制作、映画、デザイン、クラフト、建築などが含まれます。コンセプチュアル・アートやテキスタイルのように、必ずしも視覚だけに完結しない分野でも、視覚的な要素が関わってきます。

写真がこの世界に自然に属するのは、「視覚的な手段で絵を作り出す」メディアだからです。構図、見え方、私たちの見るものを作品やイメージへと変換する、という点では、素描や絵画と共通しています。ただし絵画が「顔料を支持体に塗り重ねる」行為であるのに対し、写真は「光そのものの働き」に依存しています。

この違いゆえに、写真はテクノロジーとアートがもっともはっきり出会っている例のひとつだと言えます。プロセスは機械的・電子的ですが、その成果はあくまで視覚芸術の一部なのです。

テクノロジーにかたちづくられるメディア

写真というメディアは、視覚芸術全体の大きな変化もよく物語っています。それは、「アーティストが伝統的なメディアだけに縛られなくなった」という変化です。近年では、コンピュータやデジタルツールの登場によって、古くからある表現形式と新しい表現形式との境界線があいまいになってきました。

電子的な撮像(デジタル撮影)が広く使われるようになったことで、写真はより大きなデジタル環境と結びつきました。image という語の広い使い方も、その流れを反映しています。ひとつの視覚作品が、写真撮影から始まり、編集、デザイン、アニメーション、その他のコンピュータベースの処理へと連なっていくことも珍しくありません。デジタル技術が広がるにつれ、写真家、イラストレーター、レタッチャー(フォトエディター)などの役割の境界も、以前ほど明確ではなくなりました。

だからといって、写真が「写真らしさ」を失ったわけではありません。ただ、「光で描く」行為が、より大きな視覚のエコシステムの中で行われるようになったということです。そのエコシステムでは、画像の記録・編集・表示が、多様なツールをまたぎながら連続的に行われています。

写真とほかのイメージ表現

写真をほかの視覚芸術と並べてみると、その固有の性格はいっそうはっきりします。

素描(ドローイング)はふつう、道具で面に圧力をかけたり、道具を動かしたりして「痕跡」を残していく行為です。絵画は、媒体と結合材に溶いた顔料を、紙・キャンバス・壁などの支持体に塗り重ねていきます。版画は、版となる板や板面に像を作り、それをインクなどの顔料を介して平面へと転写します。

写真はそれとは違う方法で働きます。イメージを主に「触れること」で作り上げるのではなく、「光への露光によって記録する」ことで成立するのです。この点が、写真をほかの視覚メディアの中でユニークな位置に置いています。一つひとつの痕跡を手で生み出すというより、「世界にすでに存在する視覚的な効果」を、ある瞬間ごとにとらえて固定する行為なのです。

とはいえ、写真はこれらの古くからある表現と、大事な点で共通しています。それは、「見るという行為を、かたち(フォーム)へと変換する」方法である、ということです。

「光で描く」という言葉が残り続ける理由

「光で描く(drawing with light)」という表現が長く使われ続けてきたのは、写真の科学的な側面と美的な側面の両方を、うまく言い表しているからです。メカニズムの説明としても明快です。露光のあいだ、光が感光材や記録チップの上に刻み込まれていく——それが写真です。同時に、この表現は写真というメディアの「不思議さ」や「魅力」も伝えています。写真は単なる技術的プロセスではなく、「光そのものの痕跡を見えるかたちにする」方法でもあるのです。

だからこそ、この名前はいまでもどこか優雅に響きます。写真は、ただの「絵」以上の存在です。カメラを通して、光と時間が出会い、その出会いがひとつのイメージとして「固定」された結果なのです。

これから「photography(写真)」という言葉を耳にしたら、それが単に「撮影すること」のラベルではない、ということを思い出してみてください。その言葉は、そこで実際に起きていることを、正確に言い表しています。機械式であれ電子式であれ、あらゆるカメラが行っていることは、きわめてシンプルでありながら驚くべき行為なのです——光で描くこと。

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