アビドスの船:古代エジプトが5000年前に船を造った方法

アビュドスの船は、約5000年前のエジプトで、すでにどれほど高度な造船技術が存在していたかを示す貴重な手がかりです。エジプトのアビュドスで見つかったこれらの古代の儀礼用の船は、初期王朝時代を代表する驚くべき発見のひとつです。なかでも特に注目された船があり、それは「現存する最古の板張り船」であることがわかりました。

ここで重要なのは、板張り船が単なるいかだや中をくり抜いた丸木舟ではないという点です。板張り船とは、複数の木の板=プランクをつなぎ合わせて船体を形作った船のことです。こうした構造は、木材の成形と組み立てに関する計画性や精密さ、そして実用的な船を作るための明確な理解があったことを物語ります。

船の埋葬施設は、シュネト・エル・ゼビブと呼ばれる大きな日干し煉瓦の囲いの近くで確認されました。この建造物は、第2王朝のファラオ、カセケムウイに帰属すると考えられています。この遺跡は、初期のファラオたちが葬られた王墓ウム・エル・カアブから、ほぼ1マイル離れた場所にあります。

最初の手がかりは、風で砂が吹き飛ばされたあとに、地表に筋状に現れた日干し煉瓦の列でした。当初、それらはただの壁の残骸のように見えました。しかし、後になって、それが初期王朝時代に属する十数隻の船の埋葬施設を区画していることが明らかになったのです。最終的に、全部で14隻の船が確認されました。

それぞれの船の墓には、独自の煉瓦で囲まれた境界壁がありました。墓の平面は船の形をしており、表面は泥の漆喰で塗られ、白く上塗りされていました。船首や船尾に置かれた小さな岩は、錨を表していたと考えられます。船首は船の前側、船尾は後ろ側です。墓そのものが、中に納められた船の形と象徴性をなぞるように設計されていたのです。

遺物は非常にもろかったため、考古学者たちは慎重に作業を進めました。木材の多くはひどく劣化しており、保存処理の計画が整うまで、本格的な発掘作業を見合わせなければならないほどでした。

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常識を変えた一隻の船

アビュドスの船の中でも、とくに重要な存在になったのが「10号船」と呼ばれる一隻です。この船は、風雨や侵食によって一部が徐々に露出していたため、最初に調査対象となりました。

5日間にわたり、考古学者たちは船の中央部分を調べました。そこで見つかったのは、木のプランク、分解してしまったロープ、そして葦の束でした。船体の大部分は木を食べるアリによって被害を受けており、大きな範囲が「フラス」と呼ばれるアリの排泄物に変わっていました。不思議なことに、元の木材は失われていたにもかかわらず、そのフラスが船体の形を保っていたのです。そのおかげで、研究者たちは当初の船の構造を復元することができました。

調査の結果、これが「現時点で知られている中で最古の板張り船」であることが確認されました。

外側から内側へ組み上げる構造

アビュドスの船の特徴のひとつは、その組み立て方にあります。証拠から、この船は「外側から内側へ」作られたことがわかりました。

つまり、まず外側の殻となる部分が先に形作られていたのです。内部には、後の時代の船に見られるようなフレームやリブ(肋骨)のような骨組みがありませんでした。その代わりに、プランク同士が直接つながって船体を構成し、板と板の継ぎ目には葦の束が詰められていました。

葦は湿地などに生える背の高い草状の植物です。ここでは継ぎ目を埋めるパッキング材として使われました。継ぎ目に葦を詰めることで、プランク同士のすき間をふさぐ役割を果たしたと考えられます。さらに、アビュドスの船の床面も葦で覆われていました。

この「外側から先に殻を作る」方法は、後世に広まった多くの船の造り方とは大きく異なります。つまり、初期のエジプトの造船家たちは、すでに板張り船の標準化された建造法を確立していたのです。実際、この工法はその後も1000年以上にわたってエジプトで継承されました。

長期間にわたって使われ続けたという事実は、この設計が何世代にもわたり十分に実用的であったことを示しています。

細長く浅い、水上航行のための船

アビュドスの船は大型ですが、喫水は浅いものでした。平均すると全長は約75フィート(およそ23メートル)、最も幅の広い部分でも7〜10フィート(約2〜3メートル)ほどで、深さはわずか2フィート(約60センチ)ほどしかありませんでした。

さらに、船首と船尾は細く絞られ、全体としてほっそりとした細長い形状をしていました。このことから、これらが陸上での安定性よりも、水上での移動性能を重視して設計されていたことがわかります。

とくに顕著なのは、内部骨組みのない船体が、水の支えを失うとねじれやすいという点です。アビュドスの船の一部にも、まさにその現象が起きていました。内部に「骨格」を持たない構造では、埋葬されて長期間水から離れた状態になると、変形はほとんど避けられませんでした。

言い換えれば、これらは「水に浮かんでいる状態を前提に形が成り立つ船」だったのです。水上では合理的な形状も、陸に上げられ長く放置されると、むしろ不安定で歪んだ姿に見えてしまいます。

初期エジプト造船における素材と色彩

アビュドスの船の木材には、現地産のタマリクス(タマリスク、ソルトシーダーとも呼ばれる)が使われていました。これは、後のエジプト船がしばしばレバノン産の杉(レバノンシダー)を好んで用いるようになったこと——たとえば有名なクフ王の船——とは対照的です。

アビュドスの船は、少なくとも船体に関しては、初期の造船家たちが主に地元の木材を利用していたことを示しています。一方で、ウム・エル・カアブの墓では、柱や梁にレバノン産の杉がすでに輸入されて使われていました。つまり、遠隔地から木材を運び利用する技術やネットワーク自体はすでに存在していたものの、アビュドスの船そのものはそうした輸入材ではなく、地元材で作られていたわけです。

また、これらの船は、木地のまま放置された素朴な構造物ではありませんでした。いくつかの船は白い漆喰で覆われており、この処理はアビュドスの墓に施されたものと共通しています。10号船は黄色に塗られており、他にも鮮やかな顔料の痕跡が確認されています。白い顔料の跡も見つかりました。

さらに、船を覆う日干し煉瓦の外装の一部からは、船の上に柱やペナント(旗)を立てるための支持構造が存在した可能性を示す証拠も見つかっています。ペナントとは、細長い旗やバナーで、目印や象徴として掲げられるものです。もしそうだとすれば、これらの船は高度な技術を備えていただけでなく、視覚的にも非常に印象的な姿をしていた可能性があります。

単なる船以上の存在:王権と来世の意味

アビュドスの船は、たまたま残された日常用の船ではありません。これらは正式な「船の墓」に収められており、船首はナイル川の方角を向いていました。専門家たちは、これらを「来世でファラオが使用する王家の船」と解釈しています。

この儀礼的な意味づけが、なぜ彼らが船をこれほど丁寧に埋葬し、重要な王墓建造物の近くに配置したのかを説明してくれます。これらの船は、王が死後に辿る旅路に関する信仰と結びついていたと考えられるのです。

アビュドスの船は、後の王朝に見られる壮大な「太陽の船」の先駆けとみなされています。後世のエジプトの信仰では、ファラオは太陽神ラーとともに、日中は聖なるナイルを航行するとされました。アビュドスの船は、その伝統のより古い段階に属し、のちに太陽の聖船(ソーラー・バーク)と結びつく多くの象徴的な意味を、すでに備えていたように見えます。

太陽の聖船とは、太陽と神聖な旅とを結びつけた儀礼用の船のことです。はるか後世のクフ王の船は、通常「最古の太陽の聖船」として言及されますが、アビュドスの船は、それ以前から王家の葬送用の船という発想がすでに確立していたことを示しています。

初期エジプト工学を垣間見る

アビュドスの船は、初期エジプトの職人たちがすでに大規模な木造建造物を作りこなしていたこと、再現性の高い建造システムを開発していたこと、そして実用と儀礼の両面で重要な船を作っていたことを明らかにしてくれます。

それらは、複数のプランクをつなぎ合わせて作られた長く細い殻構造の船で、継ぎ目は葦で密封され、河川航行用に形づくられていました。船体は漆喰や塗料で仕上げられ、場合によっては柱やペナントで装飾されていた可能性もあります。何より重要なのは、この設計が一過性の実験では終わらず、1000年以上にわたり受け継がれていったという点です。

アビュドスの船がこれほど魅力的なのは、そのためです。王家の記念建造物のそばに埋葬された単なる古物ではなく、高度な造船技術が驚くほど早い段階でエジプトに成立していたこと、そしてその技術が何世紀にもわたって造船に影響を与え続けたことを証明しているのです。

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