1〜2歳ごろのことばの大爆発:1日に7〜9語ふえることも

幼児期でとくにワクワクする瞬間のひとつが、「ことば」が急にどんどん出てくるようになる時期です。ここでいう幼児とはだいたい1〜3歳ごろの子どもを指し、この時期は認知面・情緒面・社会性などあらゆる発達が一気に進みます。そのなかでも、とくに大人の目に見えやすいのが「ことば」です。昨日まで知っている単語はほんの少しだったのに、ある日を境に毎日のように新しいことばが増えていく——そんな変化を体験する人も少なくありません。

多くの幼児は生後18か月ごろから、ことばの増え方が急に加速する時期に入ります。このころには、1日に7〜9語もの新しい単語を覚えることもあります。そんなペースで語彙が増えていくと、その子がまさに“今この瞬間に”世界との新しい関わり方を築いているように感じられるでしょう。

「ことばの爆発」とは、幼児の語彙がそれまでよりもずっと速いスピードで増えはじめる時期を指す言葉です。語彙とは、ある人が知っていて実際に使う単語の集まりのこと。幼児の場合、この語彙の伸びは日常生活の変化としてとても目立って表れます。

最初のはっきりした「はじめてのことば」は、おおよそ生後12か月ごろに出ることが多いとされていますが、これはあくまで平均です。そのあと語彙は少しずつ増えていき、18か月ごろになると、多くの子どもが単語をかなり速いペースで覚えはじめます。だからこそ、この時期は保護者にとっても印象的に映ります。周りの人の名前を言おうとしたり、物の名前を一生懸命ラベリングしたり、慣れたことばを何度もくり返し言ってみたり——耳に入ってくることばが一気に増えるのです。

同じころ、幼児はだいたい50語程度のことばを知っていることが多いとされています。この「50語前後」という目安は、コミュニケーションの幅がぐっと広がりはじめるポイントでもあります。身振りや声・泣き声だけに頼るのではなく、ことばを使ってより意図的に自分の気持ちを伝えられるようになっていきます。

単語から「ちいさな文」へ

次の大きな飛躍は、その少しあとにやってきます。おおよそ21か月ごろになると、多くの幼児が2語を組み合わせた「二語文」を話すようになります。とてもシンプルに聞こえるかもしれませんが、発達のうえでは大きな一歩です。たとえば「いく よ」「ママ ちょうだい」「ベビー あそぶ」などの表現がその例です。

こうした短い組み合わせは、その子が単語をただバラバラに言っているだけではないことを示しています。頭のなかで「こと」と「こと」をつなげ、意味としてまとめはじめているのです。たった二語でも、「動き」や「ほしい気持ち」、「人と物の関係」などを表現できます。

だからこそ、二語文は聞いていてとてもワクワクさせられます。ただの「かわいい話し方」ではなく、その子がことばを「意味を伝える道具」として使いはじめている証拠だからです。目の前の世界の名前を言うだけでなく、それを整理し、自分なりに「構造化」しはじめていると言えます。

なぜ日常生活がガラッと変わるのか

語彙が増えるにつれ、幼児は自分の「ほしい」「してほしい」「したくない」といった気持ちやニーズを、大人にずっと上手に伝えられるようになります。これは家庭のリズムを一変させるほどの変化です。やりとりの中心がだんだんことばになり、多くの子どもがだんだんと、はっきりした要求を伝えられるようになります。

それまで大人が表情や泣き方から「何がいやなのかな?」と推測しなければならなかった場面でも、幼児自身が好みや不快感を直接、ことばで表現しはじめます。ちょうどこの時期は、自立心が強く育っていく時期でもあります。周囲を探索し、自分の好き嫌いを主張し、自分の意思で行動しようとする、その「ひとりの人」としての姿がはっきりしてくるのです。

ことばは、その自立を支える大きな力になります。語彙が増えれば増えるほど、「何をしたいのか」「何に興味があるのか」「周りの人にどうしてほしいのか」を、より明確に伝えられるようになります。

「ベッドでのおしゃべり」:眠る前のひそかな練習時間

幼児のことばの発達で、とくに微笑ましいエピソードとしてよく語られるのが、寝る前の「ベッド(ベビーベッド)でのおしゃべり」です。これは、子どもが寝入る前にひとりでブツブツと話しているように聞こえる状態を指します。誰かとやりとりをしている会話ではなく、ひとりで続ける「ひとりごと(モノローグ)」です。

このベッドでのおしゃべりは、小声のささやきのように聞こえたり、意味のわからない音の連なりに聞こえたり、ときどき知っている単語が混ざっていたりと、さまざまです。多くの場合、これはさながら「ひそかな練習時間」。誰も相手をしていないように見えても、その子は会話のスキルを自分なりに練習しているのです。

この点が興味深いのは、ことばが「欲しいものを手に入れる手段」以上の存在だとわかるからです。幼児はことばを“能動的に”練習しています。眠る前の静かな時間に、音を試し、単語をくり返し、話しことばのリズムやパターンで遊んでいるように見えます。ある意味では、自分自身で自分をトレーニングしていると言えるでしょう。

ことばは、たくさんある発達指標のひとつ

話しはじめはたしかに目につきやすい発達指標ですが、幼児期の発達はそれだけではありません。身体の成長、全身運動(粗大運動)スキル、手先の細かい動き(微細運動)スキル、視力、聴力とことば、そして社会性など、複数の領域が相互に関わりあいながら進んでいきます。

粗大運動とは、歩く・走る・ジャンプする・よじ登るといった、大きな筋肉を使った動きをさします。微細運動は、自分で食べる・お絵かきする・小さな物をつまんで操作するなどの、より細かな筋肉の動きです。社会性の発達には、一緒に遊ぶこと、順番を待つこと、ごっこ遊びなど、他者とのかかわりが含まれます。

ことばの発達は、こうした大きな全体像の一部です。聴覚や発話は、単に音を出す・聞き取るだけでなく、入ってきた情報を理解し、ことばとして学び、それをコミュニケーションに上手く使っていく力を含みます。つまり、幼児の「おしゃべり」が目に見えて増えはじめたとき、その裏では多くの見えない発達の変化が同時進行しているのです。

「ふつう」の幅はとても広い

ことばの発達はワクワクするものですが、幼児の発達全般は、カレンダーどおりにきっちり進むわけではありません。発達は「連続体(スペクトラム)」のようなもので、なだらかに進みつつ、子どもによってスピードや順序にかなりの違いがあります。つまり、「ふつう」と考えられる範囲にはかなりの幅があるのです。

専門家は、一般的にこの年齢までに到達していることが望ましい、という「発達の目安(マイルストーン)」を示していますが、同時に、子どもはそれぞれ自分のペースで育つことも強調しています。目安どおりぴったりにできるようにならなくても、全体として正常範囲にあるかぎり、過度に心配する必要はないとされています。

早産で生まれた場合や、乳児期の病気などが発達のペースに影響することもあります。だからこそ、子ども同士を単純に比べることはあまり意味がありません。同じ年齢の幼児でも、ことばの出方、動き方、社会的なふるまいがかなり違って見えることがありますが、それでも両方とも「正常範囲」のことが多いのです。

早いことばの発達が示すもの・示さないもの

研究のなかには、発達のマイルストーンを早く達成することと、その後の知能との間に関連を見いだしたものもあります。マイルストーンの達成が大きく遅れている場合、知的もしくは身体的な障害と関係する可能性がある、ということは以前からよく知られていました。さらに近年では、一般集団においても、発達のマイルストーンをより早く達成する子どもほど、平均するとその後の知能指数が高い傾向があるという研究結果も報告されています。

たとえば2007年に発表された研究では、1946年にイギリスで生まれた約5000人以上の子どもを対象に、立ち上がれるようになった時期と8歳時点の知能指数との関係が調べられました。その結果、1か月早く立てるようになるごとに、8歳でのIQが平均0.5ポイント高くなるという関連が報告されています。IQ(知能指数)は、認知能力の一部を数値で示そうとする指標です。

また2018年の別の研究では、ことばに関連するマイルストーンと成人後の知能との関係が検討されました。この研究では、18か月までに絵に描かれた物や動物の名前を言えるか、18〜24か月か、それ以降かといった基準のほか、24か月より前に文を作れるようになった子どもと、24か月以降になってから文を作れるようになった子どもで、その後のIQを比較しています。その結果、24か月未満で文を作れるようになった人たちの若年成人期の平均IQは107、24か月を過ぎてから文を作れるようになった人たちの平均IQは101だったと報告されています。

とはいえ、こうした結果は文脈の中で理解する必要があります。マイルストーンを早く達成したことや3歳までの頭囲の大きさが説明できた成人IQのばらつきは全体の約6%にすぎず、親の社会経済的地位や子どもの性別などが説明した割合は約23%でした。また専門家は、正常範囲内で発達しているかぎり、「マイルストーンをとにかく早くクリアさせよう」と急がせることには慎重であるべきだとしています。

言い換えれば、早く話しはじめる子はたしかに目を引きますが、幼児の発達には数多くの要因がかかわっており、ひとつのマイルストーンだけでその子の将来を語ることはできない、ということです。

ことば・感情・幼児のこころ

ことばの発達は、大きな感情の変化と同時進行で進みます。幼児は感情表現が豊かで、この時期は「イヤイヤ期」と呼ばれることもあります。強いかんしゃく(癇癪)がよく見られるためです。こうした癇癪は、子どもや環境によっては生後9か月ごろから見られることもあります。

癇癪が起こりやすい理由のひとつは、幼児がとても強い感情を経験しているにもかかわらず、その気持ちを年長の子どもや大人のようにことばで表現する力がまだ十分ではないことにあります。空腹、不快感、疲れ、自立したい気持ちなどが、感情の爆発を引き起こすきっかけになります。

だからこそ、「ことばの爆発」はとても意味のある変化です。ことばが増えるにつれて、幼児は自分の望みや必要なことを、少しずつことばで伝えられるようになっていきます。もちろん、ことばが増えたからといって感情そのものが小さくなるわけではありません。ただ、感情と表現のあいだにあったギャップを、ひとつひとつの新しい単語が少しずつ埋めていくのです。

どこか魔法のように感じられるマイルストーン

この時期がとくに心に残るのには理由があります。歩けるようになると、幼児の「世界との距離」が変わりますが、ことばが増えると、「世界を誰かと分かち合う仕方」そのものが変わるからです。子どもは、気づいたことを指さして伝えたり、助けを求めたり、人の名前を呼んだり、眠る前のベッドでひとりことばを練習したりできるようになります。そんな小さなフレーズのひとつひとつが、新しい扉を開いていきます。

幼児期は、成長が目覚ましく進む時期です。そのなかでも、生後18か月ごろに起こることばの急な伸びは、その成長をもっともはっきりと感じさせてくれるサインのひとつでしょう。生後12か月ごろの最初のことばから、18か月ごろに50語前後へ、そして21か月ごろの二語文へと、進み方はとても速く、見ていて驚くほどです。

幼児が1日に7〜9語もの新しいことばを覚えはじめたとき、それは単に語彙が増えたというだけではありません。成長するこころが、人とつながり、自分の好みを伝え、体験を「ことば」に変えていく音が、そこに響いているのです。

幼児が毎日新しいことばを覚えるように、あなたの知識も毎日アップデートしませんか?DeepSwipeをダウンロードして、日々の学びをどんどん広げていきましょう。