命の新陳代謝:種の99%はすでに消えた

森や海、虫や鳥、人間を見ていると、地球上の生命はとても恒久的なものに思えます。けれども、地球の長い歴史を通して見れば、生命は決して固定されたものではありません。これまでに地球上に存在したあらゆる生物種のうち、99%以上はすでに絶滅しています。この事実を知ると、自然の見え方が大きく変わります。いま私たちが目にしている生き物の世界は、かつて存在した、はるかに大きく絶えず変化する物語の、ほんの一部にすぎないのです。

絶滅は生物学の「おまけ」ではありません。生命史が展開してきたごく基本的なあり方のひとつです。生物種は生まれ、変化し、そして消えていきます。気の遠くなるような時間のなかで、この入れ替わりがあらゆるレベルで生命の多様性を形づくってきました。

絶滅とは、ある生物種が地球上からいなくなる過程を指します。最も単純にいえば、その種の最後の個体が死んだ瞬間が絶滅の瞬間です。

言葉としてはわかりやすいのですが、現実には「いつ絶滅が起きたか」を正確に判断するのは難しいことが多くあります。ある種がとても広い分布域を持っていたり、個体を見つけることが難しかったりするためです。そのため、絶滅はたいてい、長いあいだその種の個体がまったく観察されなくなってから、振り返ってはじめて確認されます。

つまり絶滅は、生物学的な出来事であると同時に、証拠の問題でもあります。最後の個体が死に、すでに種が消えていたとしても、「もう絶滅した」と確信を持って言えるようになるのは、ずっと後になってからなのです。

これほど多くの種が消えていく理由

生物種は永遠には存続しません。時間とともに環境条件は変化し、生息地は移り変わり、競争は激しくなることがあります。生息地の変化に適応できなくなったり、より優れた競争相手に太刀打ちできなくなったりしたとき、その種は絶滅します。

この考え方は、絶滅を生命そのものの本質と結びつけています。生き物は、自分の状態を保ち、周囲の変化に反応し、成長し、繁殖し、環境に適応し続けなければなりません。もしある種が、その生息環境のなかでこうしたことを十分うまく行えなくなれば、個体数は減り続け、やがてひとつも残らなくなるかもしれません。

地球の環境は、歴史を通じて決して静止したことがありません。地球の生物圏――すべての生態系を合わせたもの――は、数十億年かけて姿を変えてきました。同時に、生物たち自身も環境を作り変えています。たとえば微生物は、地球史の大部分にわたって居住可能な環境を支配してきましたが、その代謝活動によって、世界の物理的・化学的な条件を大きく変えてきました。その代表例が、シアノバクテリアによる光合成での酸素放出です。これによって地球規模の環境変化が起こり、新たな進化上の課題が生まれました。

このように、生物と環境の絶え間ない相互作用が続いてきた結果、絶滅は生命史の深いところに織り込まれた現象になっているのです。

驚くべき「命の入れ替わり」の規模

「これまでに生きた生物種の99%以上が絶滅している」という事実は、生物種がどれほどはかない存在かを端的に示しています。

いま目にする生物多様性――現在生きている生物の種類の豊かさ――は、「新しい種がひたすら足されてきた結果」としてまっすぐ積み上がってきたわけではありません。そうではなく、進化によって新しい種が生まれる一方で、絶えず種が失われてきた結果なのです。新しい種が現れ、古い種が消え、そのたびに生き物の世界は何度も組み替えられてきました。

進化とは、ある生物集団の遺伝的特徴が世代を重ねて変化していくことを指します。進化は新しい種を生み出すことができ、その過程にはしばしば古い種の消滅が含まれます。つまり絶滅は進化とは別物ではなく、現在の生き物の世界をつくり出した、同じ長大なプロセスの一部なのです。

大量絶滅と進化のチャンス

絶滅は、種ごとにぽつぽつと起こることもあれば、はるかに大きな規模で一気に起こることもあります。

大量絶滅は、新しい生物群が多様化するきっかけを与えることで、進化のスピードを加速させてきた可能性があります。数多くの種が一度に消えると、生態系は大きく姿を変えます。生態系のなかで果たされていた役割――ニッチ(すみ分けた暮らし方や生態的な「場所」)と呼ばれるもの――の多くが空白になり、そこに新たな「枠」が生まれます。

すると、生き残ったグループが広がり、適応し、多様化していく余地が生まれます。このように、壊滅的な損失のあとに大きな進化的変化が続くことがあるのです。生命の歴史は、生き延びたものの物語であると同時に、繰り返される「シャッフル」の物語でもあります。

失われた世界の記録係:化石

では、なぜそれほど多くの種が消えたとわかるのでしょうか。その主要な証拠のひとつが化石記録です。

化石とは、遠い過去の生物の遺骸や痕跡が保存されたものです。一般的には、およそ1万年前より古い標本が化石とみなされます。化石には、体そのものが残ったものに加え、生物が残した痕跡も含まれます。

化石記録とは、発見済み・未発見を問わずすべての化石と、それらが堆積岩の層(地層)中のどこに位置しているか、という情報の総体です。これらの地層が、生命の長い歴史を時間順に保存する役割を果たしています。

化石の年代は実に幅広く、最も古いものは約34億年前のものとされています。つまり化石記録は、地球の生物史の膨大な時間幅をカバーしており、いまは存在しない多くの生物をも写し取っているのです。

もちろん、化石記録は「かつて生きたすべての生物」を完全に網羅しているわけではありません。それでもなお、絶滅や進化、時代とともに変わってきた生物相を知るための、非常に強力な「窓」であり続けています。

「深い時間」のなかで見る絶滅

地球上の生命の歴史は、少なくとも35億年にさかのぼります。その途方もない時間のあいだに、種は数え切れないほど誕生し、また消えていきました。

生命の最古の証拠には、西グリーンランドの約37億年前の岩石中に見られる生物起源のグラファイトや、西オーストラリアの約34.8億年前の砂岩中に残された微生物マットの化石などがあります。さらに古い可能性を示す研究結果も報告されています。このような巨大な時間スケールを通してみると、これまでに存在した種の数は途方もなく多く、そのうちごく一部だけが今も生き残っているにすぎないことがわかります。

この視点から見ると、絶滅は特別な異常事態ではなく、ごく当たり前のことになります。長期的に見れば、「消えずに生き残り続けること」のほうがむしろ例外なのです。

絶滅が、いまの生命の見え方をどう変えるか

現代の生物圏こそが「本番」の舞台だと考えてしまうのは簡単です。しかし、現在の世界は、はるか昔から続く長いドラマの、いちばん新しい一幕にすぎません。

いま生きているあらゆる植物、動物、菌類、微生物は、過去の絶滅に形づくられた系統の一部です。私たちの周りにいる種は、以前に起こった絶滅や急速な多様化、環境変動の「結果」として成り立っている生態系のなかに存在しています。

この視点は、「生物として成功する」とは何か、という考え方も変えてくれます。ある種が生命史のなかで重要な意味を持つために、「永遠に続く」必要はありません。すでに絶滅した多くの種が、進化の道筋に影響を与え、生態系を変え、現在の生命がどのようにして生まれたのかを理解する手がかりを残しているのです。

生きている世界は、静的ではなく動的

絶滅から学べるもっとも深い教訓のひとつは、「生命とは過程であって、固定された在庫リストではない」ということです。生物学者は生命を、恒常性、代謝、成長、適応、刺激への反応、繁殖といった特徴で説明することがよくあります。これらは個々の生物が持つ性質ですが、それらを包み込む「生き物の世界」全体にも、落ち着かない動的な性格があります。集団は進化し、生態系は移り変わり、種は現れては消えていきます。

したがって、生物圏は「永久不変の形が保存される博物館」ではありません。環境変化と生物同士の相互作用、そして時間によって、絶えず形を変える動的なシステムなのです。

だからこそ、「これまでの種の99%以上が失われている」という事実は、生命の豊かさと矛盾するものではありません。むしろ、その豊かさが存在する理由のひとつなのです。いま目にする多様性は、何十億年にもわたる誕生と変化、絶滅と再生の積み重ねから生まれてきました。

「いないこと」から地球を読み解く

絶滅した種は、ある意味で「生命の多数派」でありながら、いまは姿の見えない存在です。私たちはそれらを、化石や進化上のつながり、生き残りと消滅のパターンを通して知ることができます。

彼らが「いないこと」は、いま生きている種が「いること」と同じくらい多くを語ってくれます。それは、地球上の生命が常に動き続けてきたこと、環境が変わり続けてきたこと、競争が重要な意味を持つこと、そしてどれほど優勢に見える生物のかたちであっても、一時的なものにすぎないことを教えてくれます。

何よりも、生命の歴史は「生き残ったものだけの物語」ではないことを伝えています。そこには「消えたものたち」の物語があり、その消滅が、その後に続くすべてをどう形づくってきたのか――それを読み解くことこそが、私たちが地球を理解するうえで欠かせない視点なのです。

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