なぜ日本はこんなに急速に高齢化しているのか

日本は「世界一の高齢社会」と言われますが、その原因は単発の劇的な出来事ではありません。人々が以前よりずっと長生きするようになった一方で、人口を維持するのに必要なほど子どもが生まれなくなった――この2つの長期的な人口動態の変化が同時に進んだ結果です。

この組み合わせが、日本社会を数十年かけて大きくつくり変えました。日本の総人口は2008年10月に1億2,810万人でピークを迎え、その後減少に転じました。2014年の推計人口は1億2,700万人。現在と同じ傾向が続けば、2040年には1億700万人、2050年には9,700万人、2060年には8,700万人まで減ると予測されています。

ここで重要なのは、日本の高齢化は突然死亡率が跳ね上がったせいではない、という点です。むしろ最初に起きたのはその逆で、平均寿命が大きく伸びました。毎年生まれてくる子どもの数が減る一方で、より多くの人が高齢期まで生き延びるようになったため、社会全体が高齢化したのです。

人口が高齢化するとは、高齢者の割合が若年層に比べて高くなることです。日本ではこのシフトが異例のスピードで進みました。

1974年から2014年の間に、65歳以上の人口はほぼ4倍に増え、3,300万人に達して全人口の26%を占めるようになりました。一方、14歳以下の子どもの割合は、1975年の24.3%から2014年には12.8%にまで半減しました。1997年にはすでに、高齢者数が子どもの数を上回っています。

このため、日本の人口構成は特殊な形になっています。本来なら、子どもが多く高齢者が少ない「人口ピラミッド型」になるはずが、底辺部分が細くなっているのです。2014年の老年人口扶養比(65歳以上人口を15〜65歳人口で割った比率)は40%で、2036年には60%、2060年にはほぼ80%に達すると見込まれています。

つまり、労働・税金・年金・医療・介護を通じて、少ない現役世代が多い高齢者を支える構図が、今後さらに強まると予想されているのです。

平均寿命がこれほど伸びた理由

「長生き」が社会のかたちを変えた

日本の平均寿命の長さは、高齢化の大きな要因のひとつです。2016年の平均寿命は男女計で85.1歳(男性81.7歳、女性88.5歳)でした。

これは第二次世界大戦直後と比べると劇的な変化です。当時の平均寿命は女性で約54歳、男性で約50歳ほどでしたが、その後の数十年間で急速に延びていきました。

寿命延伸には、次のような要因が重なりました。

  • 栄養状態の改善
  • 医療・薬剤技術の進歩
  • 住環境の改善
  • 戦後の平和と経済的な繁栄

これらは、日本の戦後高度成長とも結びついており、長寿社会を支える条件が整っていきました。その結果、日本は65歳以上人口が約3割に達する「長寿国」として世界的に知られるようになりました。

ただし、長生きするようになったからといって、支援がいらなくなるわけではありません。高齢化が進むと、入院や通院の頻度が上がるため、医療費は膨らみます。2011年の任意の一日をとってみると、75〜79歳の2.9%が入院中で、13.4%が医師の診察を受けていました。

結果として、「より健康で長寿の社会」であるがゆえに、高齢期の医療・介護にこれまで以上の資源を割かざるを得ない、という逆説が生まれています。

少子化の問題:出生率が長期にわたって低すぎた

生まれてくる子どもの数は追いつかなかった

もう一つの大きな要因は「出生率」です。ここでいう合計特殊出生率とは、1人の女性が一生のうちに産むと想定される子どもの数を指します。移民がほとんどない社会が人口を維持するには、一般に「2.1」が必要とされます。

日本の合計特殊出生率は1974年以降、一貫して2.1を下回っています。2005年には過去最低の1.26まで落ち込み、2016年でも1.41にとどまりました。

この長期にわたる「人口置換水準」を下回る出生率こそが重要です。出生数が急激に崩れなくても、低い水準のまま何十年も続けば、人口は減少に向かいます。時間の経過とともに、まず子どもの数が減り、次に若年労働力が減り、やがて親になり得る世代の人数そのものが少なくなっていきます。

日本では、1947〜1949年に戦後ベビーブームがあり、その後は長期の低出生期が続きました。その結果、大きな高齢世代の後に、人数の少ない若年世代が続く構造となり、高齢化が一層強まったのです。

現在の出生率を前提にした推計では、2060年には65歳以上が人口の40%を占める一方、20歳未満は13%程度にまで低下すると見込まれています(1960年は40%)。

出生数はなぜ減ったのか

そして国全体の人口が小さくなる

出生数の減少は、経済面と文化・社会面の変化が重なって起きました。単一の原因というより、多様な要因が絡み合っています。

出生率低下と関連する要因として、よく挙げられるのは次のようなものです。

  • 結婚年齢の上昇と生涯未婚の増加
  • 高学歴化
  • 都市化の進行
  • 拡大家族よりも核家族世帯が主流になったこと
  • ワークライフバランスの悪さ
  • 女性の就業率の上昇
  • 賃金低下と終身雇用の後退
  • 住宅の狭さ
  • 子どもの養育費の高さ

とりわけ若い世代にとっては、経済的不安定さが大きな意味を持つようになっています。日本の労働力の約4割はパートや派遣などの非正規雇用で占められています。厚生労働省によると、非正規雇用の月収は、同条件の正社員に比べて約53%少ないとされています。この層に属する若い男性は、結婚を考えにくく、実際に既婚である割合も低くなっています。

長時間労働も無視できません。多くの若者は、過重労働による疲労感から、恋愛関係を築く意欲がそがれていると感じています。

同時に、結婚のあり方そのものも変わりました。1980年から2010年にかけて、未婚のままの人の割合は22%から約30%へと上昇しました。2022年の政府調査では、独身者のうち46.4%が結婚を望んでいる一方で、約4分の1は明確に「結婚しない方がよい」と答えています。

結婚を避ける理由としては、「自由が失われる」「経済的負担が大きい」「家事が重荷になる」といった声が多く挙げられました。女性からは家事・育児・介護の負担、男性からは収入や仕事の安定性への不安が目立ちました。姓を変えたくないとする女性の声もあります。

恋愛・交際と「遅れる家族形成」

長生きなのに、日本の人口は減っている

日本の高齢化は、恋愛や性に関する行動の変化とも関係しています。2015年の調査では、30代の日本人成人の10人に1人が「異性との性経験がない」と回答しました。同性愛の経験者などを考慮しても、全体の約5%はまったく性経験がないと推計されています。

18〜39歳の男女では、1992年から2015年の間に、性経験のない人の割合が増えました。安定した職と高い収入を持つ男性は性経験がある割合が高く、失業や不安定な雇用は処女・童貞である確率と強く結びついていました。

こうした背景から注目された言葉の一つが「草食男子」です。2010年の調査では、20代独身男性の61%、30代独身男性の70%が、自分を「草食男子」とみなし、「結婚や彼女をつくることに積極的でない」と答えています。

内閣府が2022年に実施した調査では、20代の未婚男性の約4割が「デート経験が一度もない」と回答しました。若い女性でも、その割合は25%に上りました。

こうした変化は、恋愛事情だけの話にとどまりません。実際に結婚し家庭を築く人の数、ひいては最終的に生まれる子どもの数に、直接影響を与えています。

高齢化がなぜ人口減少につながるのか

「人口が減るのは死亡者が急増したとき」と考えがちですが、日本の経験は、「長期の少子化」も同じくらい強力だということを示しています。

長年にわたって出生数が不足すると、下の世代ほど人数が少なくなっていきます。たとえ人々が長生きするようになっても、新しく生まれてくる子どもが少なすぎれば、いずれ総人口は減少に転じます。

日本は2008年の人口ピーク以降、まさにこのパターンをたどりました。2020年の国際的な分析では、日本は2100年までに総人口が50%以上減少する可能性がある23カ国の一つに数えられています。

研究者の中には、日本を地方・都市部ともに高齢化が極端に進んだ「超高齢社会」と表現する人もいます。

日常生活に現れる「高齢化の風景」

統計の数字も衝撃的ですが、社会の風景の変化はさらに目に見えやすいかもしれません。日本では毎年およそ400校の小中学校が閉校し、その一部は高齢者向けの福祉施設などに転用されています。2014年には、大人用紙おむつの売上が赤ちゃん用紙おむつを上回りました。人口の年齢バランスがどれほど変わったかを象徴する出来事です。

家族による介護も大きな負担を抱えています。日本ではこれまで、高齢者は子ども世代に頼ることが多く、「三世代同居」も推奨されてきました。しかし、大都市圏への人口移動、女性の就業拡大、子育てと親の介護が同時にのしかかる「ダブルケア」の負担などにより、三世代同居は難しくなっています。

その結果、特別養護老人ホーム、デイサービス、訪問介護・訪問看護といったサービスへの需要が高まりました。2008年時点で、およそ6,000の特別養護老人ホームが42万人の高齢者を受け入れていました。

さらに深刻なのは、孤立の問題です。一人暮らしの高齢者が増え、中には亡くなっても長期間誰にも気づかれないケースもあります。いわゆる「孤独死」です。2024年前半には、全国の警察により、一人暮らしで自宅で亡くなっていた人が37,227人確認され、その約70%が65歳以上でした。

高齢社会が抱える経済的プレッシャー

高齢化は社会問題であると同時に、経済構造全体を変えてしまいます。若い労働者が減り、高齢者の引退が進むことで、人手不足が深刻化します。2015年末時点で、日本では求職者100人に対し、求人が125件ある状態でした。

特に影響が大きいのは農業や建設業などです。日本の農業就業者の平均年齢は70歳前後で、建設業では働き手の3分の1が55歳以上。一方で30歳未満は1割程度しかいません。

こうした状況に対し、企業や政府はさまざまな対策を講じてきました。1980〜90年代には、多くの企業が定年を55歳から60歳、さらには65歳へと引き上げ、一部では定年後も働き続けられる制度を設けました。公的年金の支給開始年齢も、60歳から65歳へ段階的に引き上げられています。

日本は2000年に介護保険制度を導入し、再生医療や細胞治療などの医療技術にも投資してきました。中小企業の中には、高齢者向けに仕事内容や勤務形態を工夫して雇用を生み出しているところもあります。

それでも見通しは厳しく、OECD(経済協力開発機構)は、人手不足によって日本の経済成長率は2025年まで年0.7ポイント、その後は年0.9ポイント押し下げられると推計しています。

なぜ日本の高齢化は世界でも際立つのか

日本の人口高齢化のスピードは世界最速です。65歳以上人口の割合は、1970年の7.1%から1994年には14.1%へと倍増しましたが、これはイタリア、スウェーデン、フランスなどの国々よりはるかに短期間で起きた変化です。

また、日本は世界で最も多くの百寿者(100歳以上の人)を抱える国でもあります。2014年時点で日本には58,820人の百寿者がいて、世界全体の約5人に1人が日本に住んでいました。そのうち87%は女性です。

日本は、長期にわたって「平均寿命の大幅な伸び」と「出生率の低下」が重なったとき、社会に何が起こるのかを示す最前線の事例だと言えます。東アジアの他の地域も同じ方向に向かいつつありますが、日本はそれをより早く、より急速に経験しました。

日本から読み取れる大きな教訓

日本がこれほど急速に高齢化したのは、「長寿化」と「出生率の長期低下」という2つの人口革命が同時に進んだからです。どちらか一方だけでは、ここまで劇的な変化は起きなかったでしょう。両者が重なったことで、年齢構成、労働力、家族の形、将来の人口規模まで、社会の根幹が変わりました。

人口構造の変化は、1年単位では目立ちにくくても、数十年単位で見ると圧倒的な力を持ちます。表面上は「いつも通り」に見える社会でも、水面下では年齢バランスが静かに変わり続けています――やがて、学校が閉じ、介護施設が増え、「国全体が前よりも年老いた」と多くの人が実感する日が来るのです。

日本の人口動態は、「ゆっくりした変化」が社会のすべてを塗り替えうることを示しています。DeepSwipe で、こうした大きなアイデアの世界へ次々とスワイプしてみてください。