彗星:{カイパーベルト}(海王星の外側に広がるドーナツ状の領域で、氷でできた小天体がたくさん集まっている場所。)と{オールトの雲}(惑星よりはるか外側の宇宙空間に広がる、氷の天体が無数に集まった巨大な球状の領域。)に起源を持つ天体

夜空に突如現れた侵入者のように見える彗星ですが、その旅路の多くは太陽系のはるか外れにある2つの“貯蔵庫”から始まります。何度も戻ってきて天文学者になじみの存在となる彗星もあれば、何千年、何百万年、あるいはそれ以上の長い年月をかけて細長い軌道を回り、太陽に向かって落ち込んでくるものもあります。中には一度きりの通過で去っていくものもあります。

彗星がどこから来るのかを理解することは、なぜある彗星は予測しやすく、別の彗星は突然現れるように見えるのかを説明する手がかりになります。また、太陽系の周囲には膨大な量の氷の天体が蓄えられており、そのほとんどは遠すぎて、暗すぎて、直接は見えないという事実も浮かび上がってきます。

彗星の主な供給源は、カイパーベルトとオールトの雲です。

短周期彗星は、カイパーベルトと、それに関連する散乱円盤から来ると考えられています。カイパーベルトは海王星の外側に広がる、氷の天体が数多く存在する領域です。散乱円盤はそれと関係した領域ですが、より伸びた、傾いた軌道を持つ天体が含まれています。これらは、比較的頻繁に太陽のまわりを回る彗星の重要な供給源です。

長周期彗星は、オールトの雲から来ると考えられています。オールトの雲は、カイパーベルトのさらに外側から太陽から非常に遠いところまで広がる、膨大な数の氷の天体からなる球状の雲です。記事では、オールトの雲は太陽からおよそ2,000天文単位から最大5万天文単位付近まで広がっているとされており、さらに外縁の推定値として10万〜20万天文単位に達する可能性も挙げられています。

天文単位(AU)は、地球と太陽の平均距離を1とした単位です。この物差しを使うことで、太陽系のスケールの大きさを表現しやすくなります。距離が数万天文単位にもなるということは、これらの彗星の“貯蔵庫”がどれほど遠くにあるかを物語っています。

短周期彗星と長周期彗星の振る舞いが違う理由

遠く離れた2つの“貯蔵庫”

彗星はしばしば“公転周期”、つまり太陽のまわりを一周するのにかかる時間によって分類されます。

短周期彗星は、一般に公転周期が200年未満です。多くは惑星とほぼ同じ平面内を動いています。その軌道は太陽系外縁の巨大惑星付近まで伸び、そこから再び太陽の近くへ戻ってきます。一定の周期で戻ってくるため、最も予測しやすいタイプの彗星です。

長周期彗星はそれとは異なります。軌道離心率が非常に大きく、ほぼ円ではなく極端に細長い軌道を持っています。その周期は200年から何千年、何百万年、あるいはそれ以上にも及びます。こうした彗星が内側の太陽系に入ってくるとき、それは人類史上初めて目撃される通過かもしれません。

この違いは、その“出身地”と直結しています。短周期彗星は、カイパーベルトや散乱円盤といった太陽系外縁の比較的近い領域に由来するとされます。一方、長周期彗星は、はるか遠くのオールトの雲と結びつけられています。

オールトの雲:隠れた球状の群れ

一度きりの訪問者たち

オールトの雲は、彗星科学において最もドラマチックな概念のひとつです。平たい輪のような構造ではなく、太陽系を取り囲む球状の天体群だと考えられています。そのため、長周期彗星はほぼあらゆる方向から飛来し得ます。

記事では、ジャック・G・ヒルズにちなんで名付けられた、ヒルズ雲と呼ばれる内側の領域にも触れています。この内側の雲はドーナツ状で、外側のオールトの雲よりも太陽に近い位置にあります。モデル計算によると、この内雲は外側のハロー(外殻)よりも数十倍から数百倍多くの彗星核を含んでいる可能性があります。そして、数十億年という時間スケールで外側のオールトの雲に彗星を“補充”していると考えられています。

これは重要な点です。というのも、外側のオールトの雲は太陽に対して非常に弱くしか束縛されていないからです。言い換えると、より内側を回る天体に比べて、外側のオールトの雲の天体はずっと小さな外力でも軌道を乱されやすいのです。

彗星はなぜ太陽の方へ落ちてくるのか

彗星はどこからやって来る?

長周期彗星は、勝手に太陽へ落ちていくわけではありません。何らかの重力による“かく乱”を受けて内側へ押しやられると考えられています。

重力かく乱とは、他の天体の重力によって軌道が変化することです。オールトの雲の彗星に関しては、その主なきっかけとして、通りすがる恒星と“銀河潮汐”が挙げられています。

銀河潮汐とは、天の川銀河全体の重力が、非常に大きな距離スケールにわたって及ぼす、穏やかな引力の影響のことです。どんなに弱い力でも、天体が太陽から極端に離れている場合には無視できません。時間をかけて少しずつ押されることで、やがて軌道が変わり、内側の太陽系へ向かう落下軌道に入ることがあります。

カイパーベルトや散乱円盤の天体の場合は、外側の惑星によっても軌道が乱され、内側へ送り込まれます。特に木星は、他のすべての惑星を合わせた質量の2倍以上もの質量を持つため、決定的な役割を果たします。その重力は彗星の軌道を大きく変えることができ、長周期彗星を短周期軌道に振り替えることすらあります。

双曲線軌道と“一度きり”の来訪者

すべての彗星が戻ってくるわけではありません。

中には双曲線軌道を通る彗星もあります。双曲線軌道とは、閉じたループではなく開いた軌道であり、その天体が太陽の重力に縛られず、太陽系から脱出してしまう軌道です。こうした彗星は一度だけ内側の太陽系を通過し、そのまま二度と戻ってこない可能性があります。

彗星が双曲線軌道に乗せられるのは、太陽系内部での重力相互作用の結果であることもあります。記事の例としては、木星への接近通過によって軌道が変えられたC/1980 E1彗星が挙げられています。

太陽系外からやってくる“恒星間天体”も存在します。これは、もともと太陽系の外で生まれた天体です。記事では、1I/ʻOumuamua(オウムアムア)、2I/Borisov(ボリソフ)、3I/ATLAS(アトラス)という3つの天体が挙げられています。このうち、2I/Borisovは彗星の核の周囲にできるガスと塵のぼんやりした雲であるコマが観測されており、最初に検出された恒星間彗星と見なされています。3I/ATLASにもコマがあり、これも彗星であることを示しています。

ʻOumuamuaは、内側の太陽系を通過した際、光学的には彗星活動を示しませんでした。しかし、軌道の変化からは、太陽に温められてガスが吹き出すアウトガス(脱ガス)が起きていたことを示唆する結果が得られています。

新しい彗星が予測しづらい理由

周期彗星は、一度軌道が測定されてしまえば予報が可能です。過去に観測され、軌道が十分安定している彗星であれば、次の回帰時期を天文学者が計算で見積もることができます。

一方で、“初めて”内側の太陽系に入ってくる新しい彗星は事情が異なります。オールトの雲から内側へ押し込まれてくる過程は、細かく予測するのが難しいのです。近くを通る恒星や銀河潮汐の重力は、彗星がまだ見えるようになるよりもずっと前、太陽から非常に遠い場所でその軌道をかき乱します。そして、そうした天体が内側の太陽系に姿を現す頃には、多くの場合“突然の登場”のように感じられます。

そのため、ある彗星の出現は事前に期待されているのに、別の彗星は何の前触れもなく現れたかのように見えるのです。次に空を彩る印象的な彗星も、すでに太陽系へ向かっている最中かもしれません。ただし、まだ遠すぎて観測には引っかからないだけなのです。

膨大だが、まだ一部しか知られていない人口

2021年11月時点で知られていた彗星の数は4,584個でした。一見多いようですが、推定される総数と比べるとごく一部に過ぎません。特にオールトの雲に存在すると見積もられている彗星状天体の数は、約1兆個に達します。

これは彗星について最も驚くべき事実のひとつです。人類がカタログ化した天体は、存在する可能性のある天体群のごくごく小さなサンプルにすぎないのです。ほとんどの天体は、あまりにも遠くにあり、活動もしておらず、暗すぎるために観測されていません。

肉眼で見える彗星は、平均すると1年に1個程度とされていますが、その多くは暗く、あまり目立たないものです。特に明るく、印象的な彗星は“大彗星(グレート・コメット)”と呼ばれます。

凍った小天体が光り輝くショーへと変わるまで

宇宙空間の奥深くにいる彗星は、通常は凍りつき、活動もしていません。ところが太陽に近づくと、太陽放射によって内部の揮発性物質が温められて昇華し、核からガスが噴き出すようになります。このガスの放出が“アウトガス”と呼ばれる現象です。

彗星の固い中心部は核と呼ばれ、岩石や塵、水の氷、さらには二酸化炭素、一酸化炭素、メタン、アンモニアなどの凍った物質からできています。アウトガスが始まると、核を取り囲むようにコマと呼ばれる巨大で極端に薄いガスと塵の“大気”が形成されます。

続いて、太陽からの放射圧と太陽風が尾の形成を助けます。塵と電離ガスはそれぞれ異なる尾を作り、少し違う方向を向きます。イオン(プラズマ)の尾は太陽と反対方向へまっすぐ伸び、塵の尾はしばしば彗星の軌道に沿ってゆるやかにカーブします。

こうした特徴によって、小さな氷の天体である彗星が、空でもっともドラマチックな天文ショーの主役に変貌するのです。

出身地が重要な理由

その彗星がカイパーベルト、散乱円盤、オールトの雲のどこから来たかが分かると、天文学者はその軌道や振る舞いについて多くを推測できます。短周期彗星であれば、太陽系の外縁にある比較的近い領域を起源とし、何度もやってくる“常連客”である可能性が高いと分かります。長周期彗星であれば、太陽系を取り巻く遠方の球状の雲に由来すると考えられます。双曲線軌道を持つ天体や恒星間天体であれば、一度きりの“旅人”であるかもしれません。

彗星は、ただ尾がきれいなだけの天体ではありません。太陽系の最果て、あるいはそれを超えた世界からの“使者”なのです。その出身地を知ることで、なぜある彗星はおなじみの顔ぶれとなり、別の彗星は完全なサプライズとして現れるのかが見えてきます。

そして、まだ見ぬ彗星の人口が膨大であることを考えると、これからも空には、予想もしなかった来訪者が数多く現れる余地が残されていると言えるでしょう。

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彗星:{カイパーベルト}(海王星の外側に広がるドーナツ状の領域で、氷でできた小天体がたくさん集まっている場所。)と{オールトの雲}(惑星よりはるか外側の宇宙空間に広がる、氷の天体が無数に集まった巨大な球状の領域。)に起源を持つ天体 | DeepSwipe