天の川――なぜ多くの人が見たことがないのか

人類の歴史の大半において、天の川は当たり前の光景でした。暗い夜空を、淡く白くかすんだ帯が光の川のように横切っていたのです。ところが今では、世界の大きな地域でその姿が消えつつあります。地球人口の3分の1以上が、自宅から天の川を見ることができないほど、光害が進行しています。

これは驚くべきことです。というのも、天の川は空の片隅にある小さくかすかな天体ではなく、私たち自身の属する銀河そのものだからです。肉眼で見える恒星はすべて、この天の川銀河に属しています。一般に「天の川」と呼ばれているのは、そのうち銀河面に沿って星々が無数に集まっている方向に見える、乳白色の光の帯の部分です。個々の星は遠すぎて肉眼では見分けられませんが、その集合光として帯状に見えます。

多くの人にとって天の川が見えなくなってしまう主な理由は、「表面輝度」が比較的低いからです。

表面輝度とは、空のある広がった範囲あたりにどれだけの光を放っているかという指標です。惑星や近くの明るい恒星のような点光源は、ある程度明るい背景でもその光で「突き抜けて」見えます。しかし、天の川のように広がったぼんやりした光は、背景が少し明るくなるだけで簡単にかき消されてしまいます。人工の照明によって空自体が光ってしまうと、銀河のかすかな帯は背景に溶け込んで見えなくなるのです。

天の川が最もよく見えるのは、空が非常に暗いときだけです。おおよそ「1平方角秒あたり20.2等級」より暗い空が必要だとされます。これより明るい空では、特に都市部や郊外では、天の川を見分けるのが難しくなり、ときにはまったく見えなくなります。農村部など暗い場所で、なおかつ月が地平線の下にあるときには、天の川は非常にはっきりとした存在感を放ちます。

こうした理由から、多くの人は長年都会の光の下で暮らしながら、自分の頭上を本来は明るく構造のある光の帯が横切っていることに気づかないまま過ごしてしまうのです。

光害が実際にしていること

なぜ隠れてしまうのか

光害とは、夜空を明るくしてしまう人工の光のことです。街灯、ビルの照明、看板、そのほか人間が作り出したさまざまな光源が、夜空に明るい背景を作り出し、暗くかすかな天体をかき消してしまいます。

天の川が特に大きな影響を受けるのは、それがシャープな点や線ではなく、「拡散した光の帯」だからです。背景の空が明るくなりすぎると、天の川とのコントラストが落ちてしまい、帯そのものが見えなくなります。

人工光による夜空の明るさを示した地図を見ると、その影響がいかに広がっているかがわかります。地球人口の3分の1以上が、光害のために自宅から天の川を見ることができません。つまり、空で最も劇的な眺めの一つが、いまや何十億もの人から隠されてしまっているのです。

月明かりもまた、天の川の見え方を弱めます。本来は暗い場所でも、明るい月が出ていると、銀河のかすかな構造が洗い流されてしまいます。ただし都市の光と違って、月明かりは一時的なものです。光害は「晴れた夜ごとに」天の川の眺めを奪ってしまいます。

実際には何を見ているのか

実は何を見ているのか

天の川は、空を弧を描くように横切る、幅およそ30度ほどの白くかすんだ帯として見えます。その光は、銀河面に沿った方向にある無数の星々や物質が、個々に見分けられないほど細かく集まって放っているものです。

銀河面とは、天の川銀河の「平たい円盤状の中腹」にあたる領域です。私たちはその円盤の内部にいるため、円盤の平面に沿って視線を向けると、膨大な数の恒星やガス、塵を何重にも見通すことになります。そうした非常に込み合った視線方向が、私たちが天の川と呼ぶ光の帯となって現れます。

これによって、天の川の帯が一様ではなく、明るい部分、まだらな部分、妙に暗い部分が混在して見える理由もわかります。

より明るく見える部分は「星雲状の輝き」として柔らかく光る「星雲塊(スタークラウド)」です。これは特に星の密度が高い領域が際立っている場所です。その中でも最も目立つものの一つが、銀河中心のバルジの一部である「いて座大星雲(ラージ・サジタリウス・スタークラウド)」です。

バルジとは、天の川銀河の中央部にある、古い星を主成分とする高密度で明るい「ふくらみ」の領域で、方角としてはいて座の方向にあります。この方向が、空に見える天の川でもっとも明るい部分にあたるのは、そこが銀河中心付近を向いているからです。

暗く見える隙間は「空っぽ」ではない

明るい「心臓」を探そう

天の川でも特に印象的な特徴のいくつかは、実は明るい部分ではなく「暗い部分」です。

代表的な例が「大裂け目(グレートリフト)」と「石炭袋(コールサック)」です。これらは星が欠けている「穴」ではありません。星間塵が、もっと遠くにある星々の光をさえぎっている領域です。

星間塵とは、恒星と恒星の間の空間に広がっている細かい物質のことで、視線の先に十分な量があると、その奥にある明るい星の集まりを隠してしまいます。輝く天の川の帯を背景にすると、この塵が暗い筋や斑点として浮かび上がって見えるのです。

大裂け目は、天の川の帯を横切るように広がる暗い塵の雲の系統です。石炭袋は、南十字星の近くに見える目立った暗黒星雲です。星雲とは、宇宙空間に浮かぶガスや塵の雲のことで、この場合は背後の星々の光をさえぎることでその姿が見えています。

このような暗い構造があることで、特に本当に暗い空の下では、天の川全体が「質感のある」「裂け目の走った」帯として、強いコントラストを持って見えるようになります。

もっとも明るい部分を探すには

自分の銀河を見たことはありますか?

天の川の最も明るい領域は、いて座の方向にあります。その方向では、星雲塊が集まり、銀河中心バルジの輝きと重なって、帯がひときわふくらんで見えます。

いて座から伸びる天の川は、ぎょしゃ座付近にある銀河の反対側の方向(銀河反中心)へと空を回り込み、さらにそこから続いて再びいて座の方向へと戻っていきます。こうして天の川の帯は空を一周し、空をおおよそ2つの半球に分けるような形になります。

構造をイメージするなら、「巨大な扁平な星の円盤の内側に立っている」と考えてみてください。円盤の厚みの方向、つまり横方向に視線を向けると、星がぎっしり詰まった明るい帯として見えます。逆に円盤の外側、上や下の方向を見ると、星の数が少なく、空は比較的暗く見えます。

そのため、天の川は空全体がぼんやり明るいのではなく、「一本の帯」として現れるのです。

田舎の夜空がまったく別物に感じられる理由

暗い場所で初めて天の川を見た人が、驚きの反応を示すことは少なくありません。かすかな煙のようなものを想像していたのに、実際には、明るい塊や暗い筋、はっきりした模様をもつ太い構造が空を横切っているのが見えるからです。

違いの本質は「コントラスト」にあります。暗い田舎の夜空では、天の川の低い表面輝度が、人工の光で明るくなった空の輝きにかき消されることがありません。月が沈み、十分に暗い空が確保されると、天の川は際立った、豊かなディテールを持つ姿を現します。

その条件下では、天の川はただ「見える」だけではありません。空を支配する存在感を放つのです。

だからこそ、これほど多くの人が天の川を一度も見たことがないという事実は、信じがたいものに感じられます。変わってしまったのは銀河そのものではなく、「私たちの空」のほうなのです。

かつては誰もが共有していた空

西洋での「ミルキーウェイ(Milky Way)」という名称は、その淡く乳白色に見える様子に由来します。他の文化でも、「鳥の道」「銀の川」「天の川」「冬の街道」「サンティアゴへの道」など、さまざまな名前で呼ばれてきました。こうした呼び名は、天の川がかつてどれほどはっきりと見え、文化的にも重要な存在だったかを物語っています。

古代から近世以前の人々にとって、天の川は夜のごく普通の一部でした。1610年、ガリレオ・ガリレイは望遠鏡を用いて、そのかすかな光の帯が無数の微かな星々の集まりであることを初めて解像して示しました。近代的な都市照明が現れるよりずっと前、人々は世界中で、夜空を見上げれば、そこに複雑な構造を持つ宇宙が広がっていることを、肉眼でありのままに感じ取ることができたのです。

今日では、そうした空との日常的なつながりは弱まっています。多くの場所で、人々が天の川を知る手段は、実際に見上げることではなく、写真を通して眺めることになってしまいました。

明るい夜がもたらす隠れた代償

天の川が見えなくなるというのは、「きれいな景色が見られない」というだけの話ではありません。私たちが自分の宇宙における位置を、最も直接的に実感できる手段の一つを失うことでもあります。

空にかかるあの帯は、銀河の構造を直接目にしている眺めです。私たちが星やガス、塵からなる扁平な系の内部に住んでいることを示してくれます。いて座の方向には明るい銀河中心があり、大裂け目や石炭袋のような暗い塵雲が、天の川の上に影絵のように浮かんでいることも教えてくれます。そして夜空が、ぽつぽつと星が散った黒い空洞なのではなく、「巨大な銀河系の一部」であることを思い出させてくれます。

しかし今や、そうしたすべてが、現代の照明が作り出した光のベールの向こう側へと隠されてしまいました。

天の川は、今も変わらず、晴れた夜ごとに頭上を弧を描いて横切っています。ただそれを見るためには、多くの人が、街を離れ、月が沈むのを待ち、自分たちの銀河が再び姿を現すほど暗い空を探さなければならなくなっているのです。

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