地球の大気と青い空、赤い夕焼け

よく晴れた日に空を見上げると、どこを見ても青く見えます。ところが夕方になると、同じ空が赤やオレンジ色に染まることがあります。とても劇的な変化に思えますが、その基本的な理由は意外と単純です。太陽光は、地球の大気を通り抜けるあいだに性質が変わるのです。

地球の大気は、重力によって地球のまわりにとどめられている、さまざまな気体が混ざり合った層です。単なる「吸うための空気」ではありません。大気は、地表を有害な紫外線から守り、昼と夜の気温差を和らげ、天気や生命が成り立つ条件をつくり出しています。同時に、大気は光の進み方や散乱・反射のされ方にも大きく影響します。雲や霞(かすみ)ができるのも、大気が青空や赤い夕焼けを生み出すのも、そのためです。

光が大気中を進むとき、まっすぐ目に届く場合もあれば、空気中の気体や粒子と相互作用する場合もあります。何ともやりとりせずに届く光は「直達放射」と呼ばれます。一方、向きが変えられた光は「散乱光」といい、大気中で散乱された光です。

この散乱こそが、日中の空の色を決めるカギです。「レイリー散乱」と呼ばれる過程では、波長の短い光ほど、波長の長い光よりも散乱されやすくなります。青い光は赤い光より波長が短いため、太陽光が空気中を進むあいだに、青い光のほうがずっと強く散乱されます。青い光は太陽から直線的に届くだけでなく、空のあちこちへ向きを変えられて広がっていくのです。晴れた日に太陽と反対方向を見上げると、そこから見えている光の多くは、この散乱された青い光なのです。

だから空は青く見えるのです。

夕焼けが赤くなる理由

夕焼けが赤くなるのは、光の通り道が長くなるから

夕方、太陽は地平線近くまで低くなります。これは、太陽からの光が、頭上にあるときよりもずっと長い距離を大気の中で進まなければならないことを意味します。この長い道のりのあいだに、青い光の多くは途中で散乱され、あなたの目に届く前にあちこちへ散り散りになります。

その結果、残って届くのは、波長の長い光――とくに赤い光――を多く含む成分です。そこで、太陽やその周辺の空が、夕暮れどきに赤やオレンジ色を帯びて見えるのです。

同じような現象は、日の出のころにも起こります。重要なのは時刻そのものというより、「太陽光が大気の中を通る距離」の長さです。

大気は何でできている?

雲も地球のエネルギーをコントロールしている

空の色は、太陽光が通り抜ける「材料」から始まります。乾いた空気の主成分は窒素と酸素で、アルゴンや二酸化炭素が少量含まれ、さらにごくわずかな微量気体も混ざっています。空気には量の変動する水蒸気も含まれますし、ろ過されていない空気には、ほこり、花粉、胞子、海塩粒子、火山灰といったエアロゾルや微粒子が含まれることもあります。

エアロゾルとは、空気中に浮かぶごく小さな固体または液体の粒子のことです。これらの粒子は、視程(見通せる距離)や、霞や雲といった天気の特徴、そして放射の反射・散乱のされ方に影響するため、とても重要です。

地表から約100キロメートルの高さまでは、大気の乱流によって気体がよくかき混ぜられています。より平たく言えば、大気の下層から中層にかけては、絶えず空気のかくはんが起こっており、重い気体と軽い気体がきれいに層をなして分かれてしまうのを防いでいるのです。そのおかげで、湿度や雲、汚染といった局所的な条件によって見え方は変わるものの、大気の光学的なふるまいは地球規模ではおおむね一貫しています。

空のショーのほとんどは対流圏で起こる

空が青く見えるのにはシンプルな理由がある

大気の一番下の層を「対流圏」といい、地表から平均およそ12キロメートルの高さまで広がっています。大気全体の質量のおよそ80%と、ほとんどすべての水蒸気がこの層に含まれています。天気の大部分も、この対流圏で起こります。

これは、私たちが空に何を見るかという点でとても重要です。雲や水分、霞、活発な空気の流れは対流圏に集中しているため、日々目にする空の姿の多くは、この層によって左右されます。発達した積乱雲などは、対流圏の上端にあたる「対流圏界面(トロポポーズ)」付近まで伸びることもあります。

対流圏には大気中の水分の大半が含まれているため、太陽光が直射日光として届くのか、それとも散乱・反射・吸収されたあとに届くのかを強く左右します。たとえば一面が厚い雲に覆われた日には、直達放射はほとんど遮られ、あなたが受け取る光の大部分は散乱光になります。そのため、厚い雲の下では影がほとんど消えてしまうのです。

雲は膨大なエネルギーを反射している

雲は、空を彩るだけの存在ではありません。大気の中でも、とりわけ重要な太陽エネルギーの反射体のひとつです。性質によって差はありますが、雲は入ってくる太陽放射の最大約70%を反射することがあります。地球全体で見ると、雲は入射する太陽エネルギーのおよそ20%を反射しており、地球全体のアルベド(反射率)の約3分の2を担っています。

アルベドとは、入射した放射をどれだけ反射して吸収せずに跳ね返すかを示す指標です。アルベドが高いほど、反射が多いことを意味します。

塵(じん)も大気による反射に重要な役割を果たしていますが、雲は広い範囲を覆ううえに、宇宙から見たときの地球の明るさに強く影響するため、とくに大きな存在です。実際、遠くから観測される強い反射のきらめきが、対流圏中の氷晶で反射した光に由来すると考えられる例もあります。

つまり、空が青く見えたり夕焼けが赤くなったりするのは主に散乱によるものですが、地球全体の明るさやエネルギーバランスは、雲による反射にも大きく左右されているのです。

散乱・反射・吸収は別物

ここで、関連する3つの概念を区別しておきましょう。

散乱

散乱は、光の進む向きが変えられる現象です。これが、青い空を生み出し、赤い夕焼けをつくるもとにもなります。

反射

反射は、雲や塵のようなものに当たった放射が、跳ね返される現象です。これはエネルギーを宇宙空間側に戻し、地球全体の明るさを左右します。

吸収

吸収は、分子が放射エネルギーを取り込む現象です。分子の種類ごとに、吸収しやすい波長は異なります。たとえば、酸素やオゾンは波長300ナノメートルより短い放射をほぼすべて吸収しますし、水は700ナノメートルより長い多くの波長で吸収を起こします。

分子が放射を吸収すると、エネルギーを得て大気を温めることがあります。また大気自体も、とくに赤外線として放射を出しています。こうした吸収と放射の過程は温室効果の中心的なしくみであり、そのおかげで地球の平均地表気温は、そうでなければ考えられないほど暖かく保たれているのです。

大気が「優秀な光フィルター」である理由

大気は、すべての放射に対して同じように透明なわけではありません。大気を構成する気体は、特定の波長帯では不透明になり、別の波長帯では「窓」と呼ばれる比較的透過しやすい領域をつくります。いわゆる光学的窓は、およそ300ナノメートル付近から可視光の400〜700ナノメートルの範囲、さらに一部の赤外線にまで広がっています。

可視光は、ちょうどこの重要な透過帯の中に位置しています。そのため、太陽光は地表をとても効率よく照らすことができるのです。ただし、可視光の範囲の中でも、大気はすべての色を同じようには扱いません。波長の短い青い光は、波長の長い赤い光よりも効率よく散乱されます。まさにこの違いが、日中の青い空を描き出し、夕暮れには空の色を赤寄りにシフトさせているのです。

大気は薄いようでいて、とてつもなく影響が大きい

大気ははるか上空まで広がっていますが、その質量の大半は地表近くに集中しています。大気全体の約半分の質量は高度5.6キロメートルより下に、約90%は16キロメートルより下にあります。この地表付近への集中が、「空で起こる見た目のドラマの多くが比較的低い高度で生じる」理由のひとつです。

高度が上がるにつれて気圧と密度は下がりますが、それでも下層大気は十分に厚く、入ってくる太陽光に強く影響を与えます。だからこそ、太陽が地平線近くまで傾いたとき、見た目の変化がとても大きく感じられるのです。光は、密度の高い下層大気を、はるかに厚く貫いてこなければならなくなるからです。

美しい色以上の意味

青い空や赤い夕焼けは美しいだけでなく、この惑星について深いことを教えてくれます。地球の大気は、ただの「静かな外皮」ではありません。大気は地表を守り、熱や水分を地球全体に運び、天気をつくり、放射を選択的に通したり遮ったりし、光が私たちの目に届くまでの過程をコントロールしています。

次に頭上に広がる青空を見上げたり、夕暮れに空が赤く染まるのを眺めたりするときは、太陽光が、気体と水蒸気、雲や無数の粒子から成る複雑な外套とたえず相互作用している、その現場を目の当たりにしているのだと考えてみてください。この大気こそが、そもそも地球を「住める惑星」にしているのです。

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