地球の大気と「宇宙の境界」

地球の大気が海岸線のように、ある地点でプツンと途切れて、その一歩先から突然「宇宙」になる──そんなイメージを抱きがちですが、現実は違います。大気は重力によって地球に引きつけられた、混ざり合った気体の巨大な層で、はっきりした境界で終わるのではなく、高度とともに少しずつ薄くなっていきます。

そのため「宇宙のふち」をどこに置くかは、意外とあいまいな問題です。よく使われる目安がカーマンライン(Kármán line)で、地表から100kmの高さに定義されています。しばしば「宇宙の始まり」として扱われますが、これはあくまで取り決め上の境界であって、物理的な「壁」ではありません。その高さより上でも、大気の影響は依然として存在します。

地球の大気は、地表と宇宙空間の間に広がる保護バッファーです。地表を流星の多くや太陽からの紫外線の大部分から守り、昼と夜の気温差を和らげ、温室効果によって地球を十分に暖かく保ちます。また、大気の流れによって熱と水分を再分配し、生命が存在し進化できる化学環境・気候環境を整えています。

重力によって大気が引き止められているため、気体は地表付近ほど強く圧縮され、高度が上がるほどスカスカになります。つまり気圧や密度は一般に、高度とともに低下します。終わりがあるのではなく、「だんだん薄れる」のです。高く昇れば昇るほど、大気は薄くなっていきます。

このため、「ここから上が宇宙」という明確な境界線は存在しません。上空へ行くにつれて大気は極端に希薄になり、最外層である外気圏(エクソスフィア)を、通常の大気というよりもむしろ惑星間空間に近いものとみなす科学者もいるほどです。

カーマンライン:便利な目安だが「壁」ではない

大気のほとんどは地表近くに集中

高度100kmにあるカーマンラインは、宇宙の始まりを示す慣習的な定義として広く用いられています。国際的な取り決めでは、この高さより上へ到達した人を宇宙飛行士とみなします。しかし、物理的に言えば、この高さで大気が突然消えるわけではありません。

実際には、大気の質量の99.99997%は高度100kmより下にあります。このため、カーマンラインは法律・工学・分類などの用途にとって便利な境界です。それでも、その高さの「宇宙」は決して空っぽではありません。オーロラが発生し、電離層の下部もここに含まれます。電離層は太陽放射によって電離した領域で、短波ラジオなどの電波伝搬に影響を与えます。

カーマンラインは、実際には「実用上の区切り」ととらえるのが適切です。そこは、通常の航空機による飛行が宇宙飛行に切り替わる高さを示す一方で、地球の大気がそれよりはるか上空まで広がっていることも思い出させてくれます。

大気のほとんどは地表近くに集中している

宇宙は始まっても、空気はまだ効いている

大気は数千キロメートルの高さまで広がっていますが、その質量のほとんどは地表付近に集中しています。およそ4分の3が地表から約11km以内に、半分が下からおよそ5.6kmの範囲に詰まっています。

この集中には重要な意味があります。なぜ天気や雲、ほとんどすべての水蒸気が対流圏と呼ばれる大気の最下層に存在するのか、その理由を説明してくれます。対流圏は地表から平均約12kmまで広がっていますが、極地方では低く、赤道付近では高くなります。

この低い層には大気全体の約80%の質量が含まれています。上に積み重なった空気の重みで強く圧縮されているため、上の層よりも密度が高いのです。通常の航空機の飛行もほとんどがこの範囲内で行われます。言い換えると、人類がもっともよく知っている「空」は、はるかに背の高い構造物の、いちばん下に張り付いたごく薄い皮にすぎません。

大気には層があるが、その境目はあいまい

端のない毛布のような大気

地球の大気は、主に温度の変化パターンや組成に基づいて、5つの主な層──対流圏、成層圏、中間圏、熱圏、外気圏──に分けられます。

対流圏はいわば「天気の層」です。ほぼすべての水蒸気がここにあり、雲や嵐のほとんどはこの中で発生します。その上に位置するのが成層圏で、オゾン層を含んでいます。成層圏は、オゾンが紫外線を吸収して高度とともに温度が上昇するため、上下の混ざりが起こりにくく、非常に安定した層になっています。

成層圏の上にあるのが中間圏で、ここでは再び高度とともに温度が下がります。中間圏は地球大気中でもっとも寒い領域で、上端付近では平均して−85℃前後になります。多くの流星はこの領域で燃え尽きます。

その上には熱圏があり、およそ高度80kmから始まり、さらに数百キロメートル上空まで続きます。ここでは、まばらな気体が太陽からの電離性の強い紫外線やX線を吸収するため、温度が非常に高くなり得ます。ただし気体が極めて薄いため、私たちが日常的に感じる「熱さ」とは感覚的に異なります。

最後に、最も外側を形づくるのが外気圏です。ここでは原子や分子同士が数百キロメートルも衝突せずに飛び回るほど、ガスが希薄です。このうちのいくつかは、そのまま宇宙空間へと逃げ出していきます。

これらの層は実在し、科学的にも有用な区分ですが、硬い殻のようにきっちり積み重なっているわけではありません。層と層の境目は、くっきりした「壁」ではなく、徐々に性質が変化していく移行域です。

高度100kmを超えても、大気の役割は続く

「宇宙のふち」で驚くべき点のひとつは、高度100kmを超えた領域でも、まだ多くの大気現象が起きていることです。

オーロラは、熱圏の中のおよそ100km付近から現れることがあります。よく知られた緑色のオーロラは原子状酸素と関連しており、典型的には高度120〜400kmあたりで見られます。つまり、多くの人が単に「宇宙」と呼ぶような高さでも、地球の大気は太陽放射と壮観なかたちで相互作用しているのです。

また、電離層もこれらの高度と重なっています。この高密度のプラズマ領域は、昼間にはおよそ50〜1,000kmまで広がり、中間圏・熱圏・外気圏の一部を含みます。地上の電波伝搬に影響を及ぼすため、実用上もきわめて重要です。

したがって、カーマンラインはたしかに広く認められた「しきい値」ですが、大気物理がそこで終わるわけではありません。むしろ、「より薄く、より特異な大気」が始まる高さだと言えます。

なぜ衛星は「宇宙」にあっても空気抵抗を受けるのか

大気抵抗という概念は、多くの人にとって意外なものかもしれません。抵抗とは、物体が気体の中を動くとき、その運動を妨げる力です。地表付近では、自動車や航空機、落下する物体を減速させる身近な存在です。地球高層では抵抗は大幅に弱まりますが、ゼロになるわけではありません。

国際宇宙ステーション(ISS)は熱圏の中、高度およそ370〜460kmを周回しています。それでも、わずかながら大気抵抗を受けており、定期的に軌道を押し上げる「リブースト」が必要です。こうした操作を行わなければ、軌道が徐々に低下し、最終的には地球へ落下してしまいます。

他の人工衛星も大気の影響を受けます。太陽活動の状態によっては、高度600〜800kmといったより高い軌道でも、無視できない抵抗が発生することがあります。これは、上層大気の密度が太陽の状態に応じて変化するためです。

この事実は、地球近傍の「宇宙」が完全な真空ではないことを、もっともわかりやすく示す例のひとつです。大気は極端に薄くなっていますが、高速で飛行する宇宙機にとっては、そのわずかなガスさえ無視できません。

外気圏:大気が宇宙へ溶けていく場所

外気圏は、大気が徐々に消え去る過程がもっとも極端なかたちで現れる領域です。熱圏の上にあり、エクソベースと呼ばれる境界から始まって、太陽風や惑星間空間とあいまいに混じり合うところまで広がっています。

その上限は、どのように定義するかによって変わります。およそ1万km付近とする資料もあれば、さらにはるか遠くまで延ばして考えるものもあります。中性水素によって生じ、遠紫外線で観測される「ジオコロナ」は、少なくとも10万kmの彼方まで達していることが知られています。

この領域の主成分は極端に低密度の水素で、そのほかにヘリウムや二酸化炭素、エクソベース付近ではわずかな酸素も含まれます。粒子同士がほとんど衝突しないため、外気圏はもはや通常の意味での「気体」とはふるまいません。粒子は弾道軌道のような経路をとり、磁気圏や太陽風へ出入りすることもあります。

地球はこの外縁部からも、毎秒わずかながら物質を失っています。水素は毎秒およそ3kg、ヘリウムは約50g、それにごく微量の他の成分が宇宙空間へと流出しています。

これは、「ふちのない大気」という自然のかたちとしては、ほぼ極限に近い状態だと言えるでしょう。

惑星全体を覆う薄い盾

「宇宙のふち」について考えることは、その下にある大気の見え方も変えてくれます。大気は単なる頭上の空気ではありません。生命を守り、天気をつくり、地球周辺の宇宙環境を制御している、きわめて薄く、しかし決定的に重要な包みなのです。

海面上の平均気圧は101,325パスカル、空気の密度はおよそ1立方メートルあたり1.29kgです。しかし、私たちにとってなじみ深いこの条件が成立しているのは、大気という「柱」のごく下層部だけです。気圧は高度とともに指数関数的に低下し、呼吸・天気・航空機の飛行といった地表の営みを支えるには、あっという間に薄くなってしまいます。

それでも、宇宙船が地球を周回するほど薄くなった高さでさえ、大気はなお重要な役割を果たしています。大気はけっして「そこで終わる」ことはありません。広がり、薄れ、光り、物体を引きずり、最後にはそのまま宇宙空間へと溶け込んでいきます。

地球のふちがこれほど魅力的なのは、惑星と宇宙を隔てる境界が一本の線ではなく、とても長い移行帯だからなのです。

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