植物の多様性

植物の世界は、驚くほど多様です。「植物」という一つの言葉の中に、単細胞の微生物から、地球上で最も背の高い生物構造の一部にまでなる巨木まで、実に幅広い生命が含まれています。この多様さこそが、植物がとても重要である理由のひとつです。植物はただの背景ではなく、多くの陸上生態系の土台であり、地球上の分子状酸素の大きな供給源でもあります。

知られている植物種はおよそ38万種あり、そのほとんどが種子をつくります。さらに驚くべきことに、そのうち被子植物(花を咲かせる植物)が、全植物種の約85〜90%を占めています。しかし、植物界は花や木だけに限られません。緑藻類に加え、コケ植物、タイ類、ツノゴケ類、シダ植物、針葉樹などの裸子植物、そして被子植物といった陸上植物を含んでいます。

現在、植物は「Plantae(植物界)」に属する真核生物として理解されています。「真核生物」とは、核を含む複雑な内部構造をもつ細胞を持つ生物のことです。多くの植物は多細胞ですが、一部の緑藻類には例外もあります。

植物の多くは光合成を行います。簡単に言うと、太陽光を利用して二酸化炭素と水から糖をつくります。このプロセスは、葉緑体の中にある緑色の色素・クロロフィルに依存しており、クロロフィルが光エネルギーをとらえます。こうしてつくられた糖は、植物自身のエネルギー源になるだけでなく、地球上のほとんどの生態系を直接あるいは間接的に支えるエネルギー源にもなっています。

すべての植物が、いわゆる「緑で太陽光を利用する」イメージに当てはまるわけではありません。寄生植物の中には、クロロフィルや光合成に必要な遺伝子を失い、代わりに他の植物や菌類からエネルギーを得ているものもいます。それでも、こうした特殊な例外を含め、圧倒的多数の植物は「緑の植物系統」という共通の系譜につながっています。

信じられないほど広いサイズの幅

ほとんどの植物種は種子をつくる

植物の多様性でも特に目を引くのが、大きさの幅です。植物は顕微鏡的なサイズから巨木まで、スケールが大きく異なります。

最小クラスには、単細胞のデスミド(輪藻類)などがあり、その大きさはおよそ10マイクロメートルほどです。また、ピコゾアのように3マイクロメートル未満のものもいます。マイクロメートルは1メートルの100万分の1なので、これらの生物は肉眼ではまったく見えません。

反対に、極端に大きいのが超高木です。針葉樹のセコイア(Sequoia sempervirens)は高さ約120メートルに達することがあり、被子植物のユーカリ(Eucalyptus regnans)はおよそ100メートルまで成長することがあります。つまり植物界には、顕微鏡レベルの細胞から、景観を支配するような巨木までが含まれているのです。

このサイズの広がりは、植物という生き物がいかに柔軟に進化できるかを示す手がかりでもあります。植物は、ごく単純で小さな存在としても、根・幹・枝・葉を備えた巨大で長寿な構造体としても生きることができます。

多様性を生み出す大きなグループ

同じ「植物界」でも、姿はさまざま

植物の多様性は、大きさだけでなく、形や進化の歴史にも関わっています。

「緑色植物(Viridiplantae)」には、緑藻類と「陸上植物(胚植物、embryophytes)」が含まれます。陸上植物には、ツノゴケ類、タイ類、コケ植物、ヒカゲノカズラ類(リンボク類)などのリコポディウム類、シダ植物、針葉樹などの裸子植物、そして被子植物が含まれます。

コケ植物(コケ類・タイ類・ツノゴケ類)は、一般に比較的単純な陸上植物です。シダ植物やヒカゲノカズラ類は、維管束を持つ古い系統で、水や養分の輸送に特化した組織を備えています。針葉樹は裸子植物に属し、被子植物とは異なる種子植物です。被子植物(顕花植物)は、現在では種数の面で圧倒的に優勢なグループです。

つまり、人が「植物」と言うとき、それはバラかもしれないし、マツかもしれないし、シダの仲間かもしれませんし、場合によっては一部の緑藻を指していることもあります。このたった一語で、実に幅広い生命の姿が含まれているのです。

種子が重要な理由

植物は極小のものから巨大なものまである

約38万種とされる既知の植物種のうち、大部分は種子をつくります。種子の進化は、植物多様化の大きな成功例のひとつです。

種子植物には、針葉樹などの裸子植物と被子植物が含まれます。これらの植物では、「スポロフィト(胞子体)」が目に見える主な姿です。スポロフィトとは、植物の生活環のうち、2組の染色体(2倍体)をもつ世代のことです。

被子植物は、花を使った有性生殖を行います。花には雄しべと雌しべがあり、雄しべは花粉をつくります。花粉には雄性配偶子が含まれており、これが胚珠に到達して雌性配偶体の卵細胞を受精させます。受精後、子房は種子を包む果実へと発達します。

種子は、植物がさまざまな環境へと広がるうえで大きな役割を果たしてきました。果実全体が運ばれる場合もあれば、裂けて中の種子が散布される場合もあります。多くの動物も、種子を別の場所へ運ぶ手助けをします。

現代の植物界を支配する被子植物

被子植物は、全植物種の約85〜90%を占めています。つまり、植物界の中でも圧倒的に種数の多いグループということになります。

その成功は、繁殖のしくみと生態的な関係性に深く結びついています。多くの被子植物は、「送粉様式」と呼ばれる、授粉を有利にする特徴の組み合わせを進化させてきました。昆虫や鳥などの送粉者は、花粉や蜜を食べに花を訪れ、その際に花粉を体につけて別の花へ運んでしまいます。

被子植物は、種子散布にも動物を利用することがよくあります。果実が栄養豊富な外層を持つことで動物を引き寄せ、種子は動物の消化管を通過しても生き残れるようになっているものもいます。ほかにも、種子や果実にカギ状の突起があり、哺乳類の体毛に引っかかって運ばれるタイプもあります。

このような複雑な関係網が、被子植物の大規模な多様化を後押ししてきました。白亜紀における被子植物の急激な台頭は、かつてダーウィンが「忌まわしい謎」と呼んだほど急速なものでした。

植物の細胞・組織・構造

植物がこれほど多様な姿をとることができる理由の一つは、細胞や組織が高度に専門化しているからです。

植物細胞には、いくつかの顕著な特徴があります。まず、大きな中央液胞と呼ばれる水で満たされた袋状の区画を持っています。また、光合成が行われる葉緑体、そして主にセルロースからなる強くしなやかな細胞壁を備えています。液胞が水で満ちることで細胞は膨らみますが、細胞壁があることで破裂せず、構造的な支えにもなります。

多細胞植物では、細胞が分化して組織や器官を形成します。維管束組織には、茎や葉脈の中で輸送を担う木部(道管)と師部が含まれます。根は水とミネラルを吸収し、茎は植物体を支えつつ物質を輸送し、葉は光合成を行い、花は生殖を担当します。

こうした構造上の革新があるからこそ、植物は繊細なコケから巨木の針葉樹にいたるまで、多彩な姿をとることができるのです。

深い時間が形づくった多様性

今日見られる植物の多様性は、非常に長い進化の歴史の産物です。陸上植物の祖先は水中で進化し、最初の陸上植物は約4億5,000万年前、オルドビス紀に現れました。その組織レベルは、現在のコケ植物に近いものでした。

約4億2,000万年前のシルル紀末までには、原始的な陸上植物が多様化しはじめます。その後の化石記録には、コケ植物、クラブモス(ヒカゲノカズラ類)、シダ植物などが現れます。デボン紀の終わりまでには、根・葉・二次木部といった、現代でもおなじみの基本的な植物の特徴がすでに出そろっていました。

石炭紀には、巨大なクラブモスやトクサ類が林立する湿地林が広がりました。この時期には、最初の種子植物である初期の裸子植物も登場します。その後、被子植物は三畳紀に現れ、白亜紀に大規模な適応放散(急速な多様化)を遂げました。

この長い時間スケールを踏まえると、植物界になぜこれほど異なる体制や生殖戦略が存在するのかが見えてきます。

どこにでもいるが、同じではない植物

植物は世界中ほぼあらゆる場所に分布し、多くの生息環境を支配しています。草原、サバンナ、熱帯雨林など、植生をもとに名づけられたバイオームがあるのは、植物がそこにおける物理的・構造的な主役だからです。

過酷な環境である南極でさえ、藻類、コケ植物、タイ類、地衣類、そしてわずか2種の被子植物といった植物が生育しています。

環境の違いは、多様性を生み出す原動力にもなります。植物の成長は、温度・水・光・二酸化炭素・土壌の栄養といった非生物的要因(環境要因)に加え、密度(混み合い)・植食(草食動物による摂食)・共生する細菌や菌類・昆虫・病気といった生物的要因にも左右されます。時間とともに、これらの圧力が蓄積されることで、今日見られるような驚くべき多様性が生まれてきました。

植物多様性が重要な理由

植物の多様性は、単に「いろいろな植物がある」という興味深いカタログ以上の意味を持ちます。それは、地球上の生命と人間社会を支える基盤そのものです。

植物や藻類は、ほとんどすべての生態系で一次生産者として働いています。つまり、食物網を支える有機物を自らつくり出す存在です。地球全体の生物量(バイオマス)の約80%、炭素量にして約4,500億トンを植物が占めています。緑色植物は、地球上の分子状酸素のかなりの部分も供給しています。

人間は、食料・医薬品・材料・文化など、あらゆる面で植物の多様性に依存しています。穀物、果物、野菜は基本的な食料です。さらに植物は、木材、紙、綿や亜麻のような繊維、多くの薬や工業製品の原料を与えてくれます。数千種の植物が観賞用として栽培されており、他にも科学研究の中心的なモデルとして用いられている種もあります。

したがって、「植物多様性」を語ることは、実は地球上でもっとも広く、もっとも重要な生命の幅広さのひとつについて語っていることにほかなりません。

圧倒的な生命のひろがり

「植物の多様性」という言葉だけでは、そのスケールの大きさを十分に表しきれないほどです。植物には、顕微鏡レベルの単細胞生物から、地表を覆うコケ、太古の系統を引くシダ植物、球果をつける針葉樹、そして圧倒的多数を占める被子植物までが含まれます。彼らは地球上のあらゆる生息地を占め、サイズや構造は大きく異なり、生殖戦略もじつに多彩です。

3マイクロメートル未満の微小な細胞から高さ120メートルの巨木まで、植物界は生命がいかに壮大に多様化しうるかを教えてくれます。一見すると「ただの植物」に見える存在は、実は地球上でもっとも豊かで変化に富んだ生命の大きな枝のひとつなのです。

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